みなさんこんにちは、公認心理師のだびでです。
「真面目にやっているのにミスが減らない」
「マルチタスクになるとパニックになる」
もしあなたが、大学生や社会人になってからこうした「生きづらさ」を強く感じるようになったなら、それはあなたの努力不足や性格の問題ではないかもしれません。
近年、社会人の悩みとして注目されている「大人のADHD(注意欠如・多動症)」について、公認心理師の視点から、そのしくみ、具体的な困りごと、対策をわかりやすく解説します。
大人のADHDとは?性格ではなく「脳の特性」であるその原因
ADHD(注意欠如・多動症)は、集中が続きにくい・じっとしていられない・思いついたらすぐ動いてしまう、といった特徴がある脳の生まれつきの特性です。
「怠けている」「育て方が悪い」という問題ではありません。脳の中で情報を伝える物質(ドーパミンやノルアドレナリン)のバランスが、ほかの人と少し違うことが原因だとわかっています。
脳には「計画を立てる」「我慢する」といった役割を担う場所(前頭前野)があります。ADHDではこの部分がうまく働きにくいため、段取りを組んだり衝動を抑えたりすることが難しくなり、日常生活でさまざまな困りごとが生じます。
大人のADHDはなぜ大人になってから気づくのか?3つの理由
ADHDは生まれつきの脳の特性で、大人になって急に発症するものではありません。それなのに、なぜ大人になってから気づく人が多いのでしょうか?
理由①:子どもの頃はADHDの特性が見過ごされやすい
小さい頃は「元気な子」「活発な子」「やんちゃな子」といった言葉で片付けられてしまい、周囲の大人たちもそれを個性の範囲内として捉えるため、ADHDの特性だとは気づかれず、特に問題視されないまま過ごしてしまうことがあります。
理由②:社会人になると自己管理やマルチタスクが求められる
就職すると、自分自身でスケジュールを立てて管理したり、複数の異なる業務を同時並行で進めたり、優先順位を判断しながら仕事をこなしたりする必要が出てきます。学生時代や子どもの頃には周囲のサポートによって目立たなかった特性が、社会人として求められる自己管理能力や計画性の高さによって、「思うようにうまくできない」「周りと同じようにこなせない」という形ではっきりと表に出てくるようになります。
理由③:大人になると周囲のサポートがなくなる
学生の頃は親や先生が細かくスケジュールを管理してくれたり、提出物の期限を教えてくれたり、忘れ物がないかチェックしてくれたりと、周囲の大人たちのサポートによって何とか生活が成り立っていたことも少なくありません。しかし、社会人になると自分自身ですべてを管理し、誰も助けてくれない状況の中で一人でやらなければならなくなるため、今まで隠れていた特性が一気に表面化し、限界を迎えてしまうことがあります。
大人のADHDの特徴|社会人が職場で直面する「3つの壁」
大人のADHDは、おもに「注意が散りやすい」「落ち着かない」「すぐ動いてしまう」の3つで仕事や生活に影響を及ぼします。
ADHDの特徴①:不注意によるマルチタスクのパンクと時間管理の困難
仕事をする上で、一番困ることが多い部分です。
- いくつもの仕事を同時に頼まれるとパニックになる: どの順番でやればいいか決めるのが苦手で、一度にたくさん頼まれると頭が真っ白になってしまいます。
- 言われたことをすぐ忘れてしまう: 口で説明されたことを覚えておくのが苦手です。メモを取ろうとすると話の内容を忘れてしまい、「ちゃんと聞いてない」と思われることがあります。
- 時間の使い方がうまくいかない: 面白いと思ったことに集中しすぎて本来やるべきことが終わらなかったり、逆に締め切りが迫るまでやる気が出なかったりします。
ADHDの特徴②:大人の多動性は「心の中の落ち着かなさ」として現れる
大人の場合、子どものように走り回るのではなく、心の中の落ち着かなさとして現れるのが特徴です。
- 頭の中がずっと忙しい: 常に何かを考え続けていて、頭が休まらない感じが続きます。
- 体が勝手に動く: 会議中にペンをくるくる回したり、貧乏ゆすりをしてしまうのは、心の中のソワソワを体を動かすことで解消しようとしているサインです。
ADHDの特徴③:衝動性による見切り発車と人間関係のトラブル
- 人との関係がぎくしゃくする: 相手の話を最後まで聞かずに口をはさんだり、思ったことをそのまま言ってしまったりして、人間関係がうまくいかなくなることがあります。
- よく考えずに始めてしまう: 計画を立てないまま走り出して、あとから大きなミスに気づく「見切り発車」が重なりやすくなります。
ADHDで最も注意すべき「二次障害」|うつ病・適応障害のリスク
公認心理師としてADHDの支援で最も大切にしているのは、「二次的な心の問題」を防ぐことです。
ADHDの特性のせいで失敗が続くと、「どうして自分はみんなと同じようにできないんだろう」と自分を責め続けてしまい、その結果としてうつ病・適応障害・不安障害など別の心の病気を引き起こしてしまうことがあります。
大切なのは、「努力が足りないのではなく、脳の働き方が少し違うだけ」だと知ること。そして、自分に合った環境づくりや便利なツール(アラーム、タスク管理アプリ、耳栓など)を活用して工夫していくことが、あなたの心を守る大きな一歩になります。
大人のADHDかも?と思ったときの具体的な対処法
対処法①:発達障害を診断できる精神科・心療内科を受診する
ADHDはれっきとした診断名です。もし本当に困っているなら、発達障害を診てくれる精神科や心療内科に一度相談してみましょう。
ADHDには症状をやわらげるお薬があります。また、もしADHDではなかったとしても、あなたの「困っている感じ」に対して専門家が一緒に解決策を考えてくれます。
対処法②:ADHDのおすすめ本で理解を深める
「いきなり病院はちょっと…」という方は、まずADHDに関する本を読んでみるのもおすすめです。
実際に困っていることや、その工夫の仕方がたくさん紹介されていて、このブログだけでは伝えきれない実践的なヒントが見つかります。おすすめの本を紹介しているので、ぜひチェックしてみてください。
まとめ|大人のADHDは「脳の特性」――自分を責めず環境を工夫しよう
「大人のADHD」は、努力不足や性格の問題ではなく、脳の働き方の生まれつきの特性によるものです。子どもの頃は周囲のサポートもあって目立たなくても、社会人になって求められることが増えると、困りごとが一気に表面化することがあります。
主な困難として、「注意が散りやすい」「心の中が落ち着かない」「思いついたらすぐ動いてしまう」の3つがあり、これらが仕事や人間関係にさまざまな影響を及ぼします。そして最も気をつけたいのは、失敗の積み重ねによって自信を失い、うつ病や不安障害といった二次的な心の問題を引き起こしてしまうことです。
大切なのは、自分を責めるのではなく、自分の脳の特性を正しく知り、それに合った環境やツールを工夫していくこと。あなたの困りごとは「あなたのせい」ではありません。まずは自分の特性を知ることから、一歩を踏み出してみませんか。
参考文献
- 村山佳津美(2017)注意欠如・多動症 (ADHD) 特性の理解.心身医学57(1), pp27‐28.
- American Psychiatric Association (原著), 日本精神神経学会 (監修, 著)(2023).「DSM-5-TR 精神疾患の分類と診断の手引].医学書院.
- 太田晴久 (2020). 『大人の発達障害 仕事・生活の困ったによりそう本』 西東社.

