みなさんこんにちは、公認心理師のだびでです。
「普段は元気なのに、急に起き上がれないほどの憂鬱(ゆううつ)に襲われる」「調子が良い時は眠らなくても平気だが、後でどっと疲れが出る」
もし、極端な気分の波に呑まれて仕事や家庭生活に支障を感じているなら、それは「双極性障害(双極症)」かもしれません。
かつては躁(そう)うつ病と呼ばれていたこの疾患は、適切な治療と生活管理によってコントロールが可能です。この記事では、公認心理師の視点から、双極性障害のメカニズムと治療の全体像を、最新の医学的知見(エビデンス)に基づいて解説します。
「躁」と「うつ」を繰り返すエピソード性の障害
双極性障害は、気分が高くなって活動的になる「躁状態(または軽躁状態)」と、気分が落ちる「うつ状態」という対極の状態を繰り返す精神疾患です。この状態が続くと人間関係のトラブルや健康リスクがあり、最悪の場合は、自殺につながります。
双極性障害は、人生に深刻な影響を及ぼす可能性がありますが、適切な介入により安定した社会生活を送ることが可能です。
双極性障害の症状:「躁」と「うつ」の具体的なサイン
双極性障害の症状は、極端な「躁」と「うつ」の状態が一定期間持続することが特徴です。それぞれの状態では、気分だけでなく睡眠、思考、行動が劇的に変化します。特に躁状態では本人の自覚(病識)が薄れやすいため、周囲が客観的な変化に気づくことが重要です。
躁状態とは
気分の高さや活動量が異常に増えている状況が1週間以上持続し、日常生活を送ることが難しい場合や院が必要な状態です。
- 睡眠時間が短くても平気と感じるようになる
- たくさん話すようになる、次々と考えが浮かんで話がまとまらなくなる
- 高額な買い物をしたり、無謀な投資など金銭管理は難しくなる
うつ状態とは
うつ状態とは、気分の落ち込みや興味・喜びの喪失を特徴とする状態です。
- 一日中続く憂鬱な気分、興味や喜びの喪失
- 不眠または過眠、食欲が極端に増えたり、減ったりする
- 強い罪悪感や死にたい気持ちが現れる
Ⅰ型とⅡ型の違い:診断の鍵となる「躁」のレベル
双極性障害は、躁状態(または軽躁状態)とうつ状態を繰り返す疾患です。躁状態の強さによって「Ⅰ型」「Ⅱ型」に分けられています。
双極Ⅰ型障害とは
双極Ⅰ型障害は、入院が必要になるほど激しい「躁病エピソード」が少なくとも1回認められることが特徴です。本人は万能感が強く「絶好調」と感じやすいです。一方で、周りの人から見たら、「神になれる」「起業する」と非現実的な発言が増えたり、高額なネットショッピングを繰り返すなど生活できなくなるような行動が増えます。
仕事や家庭生活にも大きな変化が起きるため、家族や友人など周囲の人が本人の異変に気づきやすいため入院による治療が必要となるケースも多いです。
双極Ⅱ型障害とは
双極Ⅱ型障害は、Ⅰ型ほど激しくない「軽躁病エピソード」と「うつ病エピソード」を繰り返すことが特徴です。普段より活動的になり、仕事がはかどったり饒舌になったりするなど「調子が良い時期」と感じられやすく、社会生活が破綻するほどではないため、本人や周囲の人も気づきにくという特徴があります。
双極Ⅱ型障害は、軽躁よりもその後のうつ状態の苦しさから気づくことが多いです。そのため、うつ病と誤診されるリスクが高いとされています。
診断の目安として、軽躁病エピソードは症状が4日間以上続き、他者から変化が観察可能である一方、入院を要するほどの著しい機能障害はないものと定義されます。Ⅱ型の診断には、軽躁病エピソードに加えて、抑うつ(うつ病)エピソードの既往が必須となります。
双極性障害の治療
薬物療法:気分安定薬が治療の土台
双極性障害の治療では、「気分安定薬」や「抗精神病薬」が中心となります。これらは躁状態とうつ状態の両方を和らげ、再発を防ぐ役割を担います。
双極性障害の薬物療法で注意するべき点は、「うつ薬」の使用です。うつ状態だけに着目して「抗うつ薬」を使用すると躁状態になってしまう「躁転」や、躁とうつが頻繁に切り替わる「急速交代化」を招く恐れがあります。
薬物療法は医師と相談して症状の変化に応じて調整することが重要です。自己判断での服薬中断は再発リスクを高めます。疑問や副作用があれば、必ず主治医に相談しましょう。
心理・社会的支援
薬物療法だけでは、双極性障害は改善できません。正しい知識を身につけて生活環境を整えたり、生活習慣や考え方の見直しすることでより生活しやすい状態を目指していきます。
心理教育
心理教育とは、精神疾患に対する正しい理解をすることです。問題を解決するためにはまずはどのような問題があるかを具体的に理解する必要があります。
本人に対する心理教育の他に生活を支える家族への心理教育もとても大切です。
認知行動療法
双極性障害の再発予防において重要な役割を果たします。
認知行動療法を実践することで考え方を検討するので自己理解に繋げたり、生活の質(QOL)を上げる具体的な行動を設定していきます。気分の波に翻弄される前に、自分自身の「思考」と「行動」のパターンを客観的に理解し、生活の質(QOL)を安定させることも可能になります 。
生活リズムの安定
認知行動療法に限らず、生活リズムや環境を整えたりすることがした重要です。日々の活動や睡眠のリズムを記録し、生活の安定性を高めることで、気分の波を穏やかにすることを目指します。特に自分自身の「再発のサイン」(例:睡眠時間の変化、多弁になる、意欲の低下など)を理解し、生活リズムを一定に保つことができます。最初のサインは家族や恋人、友人にも共有しておくと調子が崩れたことにすぐ気づくことができます。
まとめ
双極性障害は、すごく気分の波があり、辛いものです。時には、自分や人が傷つくこともあるかもしれません。しかし、双極性障害は適切な管理によって症状をコントロールしながら自分らしく過ごせる疾患です。
「完治」を目指して焦るよりも、「寛解(症状が落ち着いた状態)」を維持することを目標に、専門家と共に歩んでいきましょう。
参考文献
- American Psychiatric Association. (2023). DSM-5-TR 精神疾患の分類と診断の手引 (日本精神神経学会 監修; 高橋三郎 ほか 監訳). 医学書院. (原著出版年: 2022)
- 日本うつ病学会 双極性障害委員会. (2018). 双極性障害(躁うつ病)とつきあうために.



