みなさんこんにちは、公認心理師のだびでです。
毎日頑張っているのに、なぜか人間関係で同じようなつまづきをしてしまう。「自分は社会の中でうまく生きられない」「どうして周りとこんなに感覚が違うんだろう」……そんなふうに孤独を感じることはありませんか?
あるいは、身近な人のあまりに極端な言動に、「どう接したらいいかわからない」と振り回されて疲れ切ってはいないでしょうか。
その悩み、もしかすると性格の「偏り」や「クセ」が関係しているかもしれません。 今回は、誤解されがちな「パーソナリティ障害」について、それがどういうものなのか、どんな種類があるのかを、心の仕組みとあわせて紐解いていきます。
パーソナリティ障害とは?
パーソナリティ障害とは、その人が属している文化や社会から期待されるものより、極端に偏った「物事の捉え方」や「行動パターン」を持っているために、本人が強い生きづらさを感じたり、周囲との人間関係がうまくいかなくなったりしている状態を指します。
パーソナリティ障害を理解する上で大切なことは、大切なことは、「性格が悪い」というわけではないということです。 生まれ持った気質と、育った環境の中で生き抜くために身につけた「自分を守るための鎧(戦略)」が、大人になってからの環境とうまく噛み合わなくなっている状態とも言えます。
1. パーソナリティ障害の3つのグループ
パーソナリティ障害は、その特徴によって大きくA・B・Cの3つのグループに分類されています 。
- A群(独特な感性を持つグループ): 対人関係に距離を置き、独自の世界観を持っています。「変わっている」と見られがちですが、高い独創性を秘めていることもあります。
- B群(感情豊かで劇的なグループ): 感情の波が大きく、周囲を巻き込むエネルギーがあります。対人関係が不安定になりやすいですが、人を惹きつける魅力も持っています。
- C群(不安や慎重さが強いグループ):不安を感じやすく、慎重で抑制的です。真面目で責任感が強い反面、ストレスを溜め込みやすい傾向があります。
次に、それぞれのグループを詳しくてみていきます。
A群:独特な感性を持つグループ
対人関係に独特の距離感を持ち、社会的に孤立しやすい傾向があります。
A群には3つのタイプがあります。
妄想性パーソナリティ障害:疑い深い「探偵タイプ」
十分な根拠がないにもかかわらず、「他人が自分を利用する」「騙そうとしている」という疑いを持ちます 。悪意のない言葉の中に、自分をけなす意味が隠されていると読み取ってしまいます 。
リスクを敏感に察知し、慎重に物事を進めることができますが、妄想によって周囲の人に恨みを抱き続け、許すことができないこともあります。その結果、職場や友人関係でトラブルになることが多いです。
シゾイドパーソナリティ障害:孤独を好む「一匹狼タイプ」
親密な関係を持ちたいと思わず、一人での行動を好みます 。他者に依存せずに、一人で作業をする力がありますが、喜びを感じられる活動が少なく、感情表現も平板なため、周りの人からは「何を考えているかわからない」と思われていまし孤立しがちです 。
統合失調型パーソナリティ障害:不思議な世界観を持つ「宇宙人タイプ」
テレパシーや第六感など、独特な信念(考え)を持っています 。
常識にとらわれないユニークで芸術的な視点を持っていますが、話し方が回りくどかったり、抽象的だったりすることもあります。そのため、親しい友人ができにくいことがあります 。
B群:感情豊かで劇的なグループ
感情や行動が派手で、周囲の人を巻き込みやすいグループです。
反社会性パーソナリティ障害:スリルを求める「冒険家タイプ」
社会的な規範や法律を守れず、嘘をついたり人を騙したりすることに良心を痛めることがありません。
迷わず大胆に行動でき、逆境に立ち向かう度胸があります。一方で、衝動的で将来の計画が立てられず、仕事を安定して続けられないことがあります 。
境界性パーソナリティ障害:感情と関係性が乱れる「ジェットコースタータイプ」
「見捨てられること」を極度におそれ、なりふり構わない努力をします 。理想化(「あなたは最高の人」)とこき下ろし(「あなたは最悪」)の両極端を揺れ動きます 。
情熱的で、他者の痛みに深く共感できる繊細さを持っています。 しかし、自殺のそぶりや自傷行為を繰り返し、周囲を試すような行動をとってしまうこともあります。
演技性パーソナリティ障害:常に主役でいたい「俳優タイプ」
自分が注目の的でないと不機嫌になります 。外見を過度に気にし、大げさな感情表現をしますが、その内容は大げさなことがあります 。
その場を明るく盛り上げ、人を楽しませるサービス精神があります。 実際の関係以上に「私たちは親密だ」と思い込み、相手を戸惑わせることがあります 。
自己愛性パーソナリティ障害:特別扱いを求める「王様タイプ」
自分が重要であるという誇大な感覚を持ち、過剰な賛美を求めます 。特権意識があり、他人の気持ちに共感しようとしません 。
自分を高めようとする意欲が強く、リーダーシップを発揮することもあります。一方で、自分の目的のために他人を利用したり、傲慢な態度をとるため、人間関係が破綻しやすいです。
4. 不安や恐怖に縛られるグループ
不安感が強く、行動が抑制的になりがちなグループです。
回避性パーソナリティ障害:傷つくのが怖い「慎重タイプ」
「批判される」「拒絶される」ことを極度に恐れ、好かれている確信がないと人と関われません 。
協調性と慎重さがあるとも言えますが、恥をかくことを恐れて、新しい活動や責任ある立場を避けてしまいます 。
依存性パーソナリティ障害:一人で決められない「依存タイプ」
日常の些細な決断でも他人の助言や保証を求めます 。一人で自分の面倒を見ることへの恐怖から、不快なことでも進んで引き受けてしまいます 。
他者をサポートすることに喜びを感じ、組織に忠実に貢献する一方で、自分で計画を立てて物事を行うことが困難で、常に誰かに頼ってしまいます 。
強迫性パーソナリティ障害:完璧主義の「委員長タイプ」
ルールや手順、完璧さにこだわりすぎ、本来の目的を見失ったり、融通がきかなくなったりします。
責任感と正確さがある一方で完璧主義すぎて仕事を完了できなかったり、他人に仕事を任せられなかったりします 。融通がきかず、頑固に見えることがあります 。
「生きづらさ」を和らげるための心理学的アプローチ
パーソナリティ障害の特性は、本人が生きるために必死で獲得した「戦略」が偏ってしまったと考えることができます 。
例えば、依存性パーソナリティ障害の人は一人ではどうしても生きることができない環境で過ごしたことで「誰かに依存する」という戦略をどんな時も選択するようになったことで「一人で行う」と言う戦略が上手ではないために選びにく状態と言えます。
精神科とパーソナリティ障害
パーソナリティ障害で困っている方は、精神科に通院することが多いです。しかし、パーソナリティ障害を直接治療する薬はありません。一方で、パーソナリティ障害に伴う不眠や不安に対しては薬が処方されることがあります。
そのため、精神科では精神療法(診察)やカウンセリング、認知行動療法などの心理学的アプローチによって生きづらさを減らすような支援を行うます。
そもそもパーソナリティ障害を「治療」と表現することも少し違和感があります。なぜなら、パーソナリティ障害は社会生活を困難にする原因ではありますが、一つの個性であり、本人にとっては生き延びるための「戦略」だからです。その行き過ぎた戦略を見直すこと、新しい戦略に挑戦することを私たち心理士は支援します。
まとめ
パーソナリティの偏りは、誰にでも多少はあるものです。しかし、それによってご自身が強い苦痛を感じていたり、仕事や生活に支障が出ていたりする場合は、専門家のサポートを受けることで楽になる可能性があります。
性格は「変えられない運命」ではありません。適切なトレーニングや支援によって、社会適応のスキルを身につけ、生きやすくすることは十分に可能です 。
参考文献
- American Psychiatric Association(編).(2023).『DSM-5-TR 精神疾患の分類と診断の手引』(日本精神神経学会(日本語版用語監修)・髙橋三郎・大野裕(監訳)・染矢俊幸・神庭重信・尾崎紀夫・三村將・村井俊哉・中尾智博(訳)).医学書院.
- 谷岡哲也・友竹正人・安原由子・大坂京子(編).(2020).『メディカルスタッフのための精神医学』中外医学社.
