みなさん、こんにちは!公認心理師のだびでです。
少しずつ日本でも知っている方が多くなってきましたが、少し違った理解をしている方も多い「境界性パーソナリティ障害」(以下BPD)。 BPDはパーソナリティ障害の一つで周囲の人からみるととても気づきにくい精神疾患です。しかし、多くの人がBPDの症状によって生きづらさを感じています。私が働いている精神科病院でもBPDの人は決して少なくありません。
BPDについて正しく理解するために、どんな本を読めばいいのかわからない。そのような疑問を持っている方もいるのではでしょうか。
今回はそんな疑問を感じている方におすすめの書籍を紹介したいと思います。
少し、厚い本ですが、BPDについて深い理解と適切な支援方法を知ることができる一冊です!
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書籍情報
書籍情報
タイトル:境界性パーソナリティ障害の世界 I HATE YOU DON'T LEAVE ME
著者:ジェロルド・J・クライスマン、ハル・ストラウス
翻訳:白川貴子
出版社:翔泳社(2023/6/21)
こんな人におすすめ
- 境界性パーソナリティ障害について深く学びたい人
- 支援現場に関わる心理職・医療職・福祉職
- 家族・恋人・友人など、BPDの方との関わりに悩んでいる方
- BPD当事者として自己理解を深めたい方
おすすめの理由
BPDの症状と背景が多面的に解説されている
本書は、精神科でBPDの診断に広く使用されているアメリカ精神医学会のDSM-Ⅴの診断基準に基づいた正確な知識だけでなく、
- 遺伝的・生物学的要因
- 精神分析的な視点(たとえば「スプリッティング」や「見捨てられ不安」)
- 家庭環境やトラウマなどの社会的要因
BPDを生物・心理・社会的に理解するための視点が網羅されています。
心理士としてBPDの支援に携わる中で、ここまでバランスよく、わかりやすくBPDの書籍は貴重だと感じました。
また、世界の研究の結果からあまり知られていあにBPDの現状を知ることができることもこの本の魅力です。
BPD支援に役立つ『SET-UPモデル』
本書では、BPDの方との関わりに役立つ「SET-UP」という対応モデルが紹介されています。
SET-UPモデルは
S(支持):相手を気遣う
E(共感):苦悩を受け止める
T(真実):BPDの本人しか最終的な責任を取ることができないという事実。
U(理解):BPDの病理や症状の理解
P(根気):改善するために諦めずに粘る
という観点で、支援者・家族・恋人など、BPDの方と接する立場にあるすべての人にとって、有効な関わり方の指針となります。
日本ではあまり知られていない理論ですが、確かにBPDの人を支援するために大切な態度がわかりやすくまとまっているモデルです。
BPD本人への配慮と治療選択肢の紹介
この本の魅力の一つは、本人を「病的な存在」としてではなく、深く傷ついた一人の人間として尊重している点です。
- BPDの症状は本人の辛さが表現されていること
- 薬物療法・心理療法の種類(DBT、精神分析、スキーマ療法など)
- 回復の可能性と希望
などが丁寧に書かれており、BPDの本人が読んでもらえる内容になっています。
公認心理師の感想
境界性パーソナリティ障害は、「わかりにくい」「支援が難しい」とされがちです。しかし、この本を通して、「あなたなんで大嫌い、でも捨てないで」と生きづらさを感じているBPDの人を理解する手がかりになります。BPDの人たちが何をもって自己破壊的な行為をするのか、対人関係が不安定なのかなどを理解する糸口が見えてきます。
そして、BPDの人たちを諦めずに支援しつづければ本人らしく生きていけるということがわかり、本人も支援者も希望を感じることができます。
実際の支援に役立つ内容が詰まっており、「感情に巻き込まれずに、でも見捨てない」という姿勢の重要性を改めて学ばされました。
まとめ
『境界性パーソナリティ障害の世界 I HATE YOU DON’T LEAVE ME』は、単なる解説書ではなく、当事者・支援者双方の「希望」につながる一冊です。
BPDをさらに一歩理解するための本としてぜひ手に取ってみてください。