皆さん、こんにちは。公認心理師のだびでです。
「部屋の隅に、知らない子どもが座っていると言う」
「昨日はしっかり話せていたのに、今日は一日ぼんやりしている」
「夜中に大きな声で寝言を言ったり、手足をばたつかせたりする」
家族のこんな変化に、戸惑っている方もいるかもしれません。こうした症状が見られる認知症のひとつが、レビー小体型認知症です。
ゲームでたとえるなら、レビー小体型認知症は、画面の表示がときどきバグを起こしてしまう状態です。そこにいないはずの人や虫が表示されたり、画面が急に明るくなったり暗くなったりするように、調子の良い時間と悪い時間が入れ替わります。大切なのは、本人にとっては、そのバグが「本物の景色」に見えているということです。
この記事では、公認心理師の立場から、レビー小体型認知症の特徴や症状、アルツハイマー型認知症などとの違い、そして進行とつきあっていくための攻略ルートを整理します。
この記事でわかること
- レビー小体型認知症とアルツハイマー型認知症の違い
- 病気が起こる仕組みと、早い段階から出やすい体の症状
- 幻視・認知機能の変動・パーキンソン症状・レム睡眠行動異常症の特徴
- 薬に過敏に反応しやすいという、家族が知っておきたい注意点
- 治療・接し方・転倒を防ぐ工夫・相談先
注意:この記事は公認心理師の立場から情報提供を目的として書いています。認知症かどうか、どのタイプかの診断は医師が行うもので、この記事で診断することはできません。気になる症状がある場合は、かかりつけ医やもの忘れ外来、地域包括支援センターなどにご相談ください。
レビー小体型認知症とは?【定義と位置づけ】
レビー小体型認知症(DLB)は、脳の神経細胞の中に「レビー小体」という異常なたんぱく質のかたまりができることで、認知機能の低下や幻視、体の動きにくさなどが起こる病気です。
アルツハイマー型認知症との違い
認知症というと、物忘れから始まるイメージが強いかもしれません。しかし、レビー小体型認知症は、アルツハイマー型認知症とは異なる特徴を持っています。
| 比べるポイント | アルツハイマー型認知症 | レビー小体型認知症 |
|---|---|---|
| 最初に目立ちやすい症状 | 物忘れ(新しいことを覚えられない) | 幻視、調子の波、動きにくさ、睡眠中の異常な行動など |
| 記憶 | 初期から低下が目立つ | 初期は比較的保たれていることが多い |
| 幻視 | 初期にはあまり見られない | はっきりとした幻視がくり返し現れやすい |
| 体の動き | 初期は保たれていることが多い | 手足のこわばり、小刻み歩行など、パーキンソン症状が出やすい |
| 調子の波 | 大きな波は少なく、ゆっくり進む | 日や時間によって、調子が大きく変わる |
物忘れが目立たないため、初期には認知症と気づかれず、幻視から「精神的な病気」と思われたり、動きにくさから「パーキンソン病」と診断されたりすることもあります。
認知症の中での位置づけ
レビー小体型認知症は、アルツハイマー型認知症、血管性認知症と並んで、「三大認知症」のひとつに数えられています。認知症のタイプによって、症状や進み方、気をつけるべき薬が異なるため、正しく見極めることがとても大切です。
ほかのタイプについては、アルツハイマー型認知症と前頭側頭型認知症の記事で解説しています。
パーキンソン病との関係
レビー小体は、パーキンソン病の人の脳でも見られます。そのため、レビー小体型認知症とパーキンソン病は、同じ「レビー小体病」の仲間と考えられています。
レビー小体が主に脳の深い部分(脳幹)にたまると、体の動きの症状が中心のパーキンソン病に、大脳の広い範囲にたまると、認知機能の症状が中心のレビー小体型認知症になる、とイメージするとわかりやすいでしょう。パーキンソン病の人が、経過の中で認知症を発症することもあります。
原因・背景
α-シヌクレインとレビー小体
レビー小体型認知症は、脳の中に「α-シヌクレイン」というたんぱく質がたまり、「レビー小体」というかたまりをつくることで起こると考えられています。このレビー小体が大脳皮質や脳幹に広がり、神経細胞のはたらきを妨げることで、さまざまな症状が現れます。
アセチルコリンとドパミンへの影響
レビー小体がたまると、特に、脳内の「アセチルコリン」や「ドパミン」という神経伝達物質を使う神経に大きな影響が出ます。
- アセチルコリンが減ると、注意力や覚醒の度合いが不安定になり、認知機能の変動や幻視が起こりやすくなります
- ドパミンが減ると、体の動きをなめらかにするはたらきが低下し、パーキンソン症状が現れます
体の症状が先に出ることがある
レビー小体型認知症では、認知機能の低下がはっきりする何年も前から、次のような体の変化が見られることがあります。
- 睡眠中に大声で寝言を言ったり、手足を動かしたりする(レム睡眠行動異常症)
- がんこな便秘
- においがわかりにくくなる
- 立ちくらみ
- 気分の落ち込み
ゲームでいえば、本格的なバグが目立つ前に、画面の端で小さなノイズが出始めているような状態です。こうしたサインに早く気づくことが、適切な診断と対応につながります。
症状・特徴で整理する
中核的な4つの特徴
レビー小体型認知症では、認知機能の低下に加えて、次の4つが中核的な特徴とされています。
| 特徴 | どんな症状か |
|---|---|
| 認知機能の変動 | 注意力や覚醒の度合いが、日や時間によって大きく変わる |
| 幻視 | そこにいない人や動物、虫などが、ありありと見える |
| レム睡眠行動異常症 | 夢の内容に合わせて、寝言を言ったり体を動かしたりする |
| パーキンソン症状 | 手足のこわばり、動作が遅くなる、小刻み歩行、転びやすいなど |
認知機能の変動
レビー小体型認知症の大きな特徴が、調子の波です。しっかりと会話ができる時間と、反応が乏しくぼんやりしている時間が、同じ日の中でも入れ替わることがあります。
家族が「認知症が治ったのでは」と期待するほどしっかりしている時間がある一方で、数時間後には反応が乏しくなることもあります。調子の良い時間を基準に「やればできるのに」と考えてしまうと、本人を追い詰めてしまうことがあるため、注意が必要です。
幻視とパレイドリア
多くの方に見られる代表的な症状が、幻視です。人や子ども、小動物、虫などが見えることが多く、本人には本物のようにありありと見えているのが特徴です。
また、実際にある物が、別の物に見えてしまう「パレイドリア」と呼ばれる見え方も特徴的です。
- 壁の模様やしみが、人の顔や虫に見える
- ハンガーにかかった服が、立っている人に見える
- 庭の赤い花が、赤い服を着た女の子に見える
本人にとっては非常にリアルな体験なので、周りから「そんなものはいない」と否定されると、強い不安や混乱を感じてしまいます。
パーキンソン症状
レビー小体型認知症の多くの方が、経過の中でパーキンソン症状を経験します。
- 筋固縮:筋肉がこわばり、動かしにくくなる
- 動作緩慢:動きが少なく、小さく、ゆっくりになる
- 姿勢反射障害:体のバランスをうまく保てない
さらに、小刻み歩行、歩き出しや方向転換で足が止まってしまう「すくみ足」、前かがみの姿勢などが見られることがあり、転倒しやすくなることに注意が必要です。
レム睡眠行動異常症
レム睡眠とは、眠っている間にまぶたの下で目が動き、鮮明な夢を見ている時間のことです。通常、この時間は体の力が抜けていて、夢の中で動いても実際の体は動きません。しかし、レム睡眠行動異常症では、夢の内容に合わせて、大きな声で寝言を言ったり、手足をばたつかせたりしてしまいます。
この症状は、レビー小体型認知症と診断されるずっと前から見られることもあり、大切な手がかりのひとつとされています。
自律神経の症状
レビー小体型認知症では、体の自動調節を担う自律神経のはたらきも乱れやすくなります。
- 立ち上がったときに血圧が下がり、ふらつく(起立性低血圧)
- 一時的に意識を失う
- がんこな便秘
- 尿が近くなる、汗をかきにくいなど
立ちくらみや失神は、転倒の原因にもなるため、特に注意が必要です。
うつ症状・不安・妄想
気分の落ち込みや不安、意欲の低下が見られることもあります。また、幻視をきっかけに、「家に知らない人が住んでいる」「家族が偽物と入れ替わった」といった妄想が現れることもあります。
薬に過敏に反応しやすい(薬剤過敏性)
家族の方に特に知っておいてほしいのが、薬への過敏性です。レビー小体型認知症の方は、幻覚や妄想を抑えるために使われる抗精神病薬に過敏に反応しやすく、少量でも、体が動かなくなる、意識がぼんやりする、飲み込みにくくなるなどの強い副作用が出ることがあります。
ほかの病院を受診するときや、入院するときには、「レビー小体型認知症と診断されている」ことを必ず伝えるようにしてください。お薬手帳に書いておくのもよい方法です。
間違えやすい・併発しやすいもの(鑑別)
レビー小体型認知症は、ほかの病気と見分けがつきにくいことがあります。
| 病気・状態 | レビー小体型認知症との主な違い |
|---|---|
| アルツハイマー型認知症 | 物忘れから始まることが多く、初期には幻視やパーキンソン症状は目立たない |
| パーキンソン病 | 体の動きの症状が先に現れ、何年もたってから認知症が加わることがある |
| うつ病 | 気分の落ち込みが中心。レビー小体型認知症の初期にも、うつ症状が見られることがある |
| 統合失調症 | 若い時期に発症することが多く、幻聴が中心。レビー小体型認知症では幻視が中心 |
| せん妄 | 体の病気や薬などをきっかけに、短い期間で意識が混乱する。認知機能の変動と似ている |
パーキンソン病との違い
レビー小体型認知症とパーキンソン病は、同じ「レビー小体病」の仲間です。一般的に、認知症の症状が、パーキンソン症状より先に、またはほぼ同じ時期に現れた場合はレビー小体型認知症、パーキンソン病の経過の中で、何年もたってから認知症が加わった場合は「認知症を伴うパーキンソン病」として区別されます。
うつ病・統合失調症との違い
レビー小体型認知症の初期には、うつ症状だけが目立ち、うつ病と診断されることがあります。また、幻視や妄想から、統合失調症などの精神疾患と思われることもあります。高齢になってから初めて、はっきりした幻視が現れた場合は、レビー小体型認知症の可能性も考える必要があります。うつ病や統合失調症については、うつ病と統合失調症の記事で解説しています。
進行とつきあう攻略ルート
治療のゴール
現在のところ、レビー小体型認知症を完全に治す方法はありません。治療の目標は、症状を和らげ、転倒などの危険を減らしながら、本人がその人らしく、安心して暮らせる時間を長くすることです。
薬物療法
レビー小体型認知症では、症状に合わせて、慎重に薬が選ばれます。
- 認知機能の症状:コリンエステラーゼ阻害薬のドネペジル(アリセプト)が、日本ではレビー小体型認知症の治療薬として承認されています(2014年)
- 幻視:まずは環境の調整や、コリンエステラーゼ阻害薬での対応が検討されます。抗精神病薬を使う場合も、薬剤過敏性があるため、医師がごく少量から慎重に判断します
- パーキンソン症状:レボドパなどの抗パーキンソン病薬が使われますが、幻視・妄想を悪化させることがあるため、少ない量から慎重に調整します。また、日本ではゾニサミドが「レビー小体型認知症に伴うパーキンソニズム」の治療薬として承認されています(2018年)
- レム睡眠行動異常症:寝室の安全対策を基本に、必要に応じて医師が薬を検討します
ひとつの症状を抑える薬が、別の症状を悪化させることもあるため、気になる変化があれば、早めに主治医に伝えてください。
症状別の対応と接し方
| 症状 | 対応のポイント |
|---|---|
| 幻視 | 頭ごなしに否定せず、「何が見えるの?」「怖かったね」と本人の気持ちを受け止める。照明を明るくする、見間違えやすい物(壁にかけた服など)を片づけるのも効果的 |
| 認知機能の変動 | 調子の良い時間に、大切な話や活動を行う。調子の悪い時間は、無理をさせず休ませる |
| パーキンソン症状 | 理学療法や作業療法で、体の動きやバランスを保つ。動作は急かさず、ゆっくり待つ |
| レム睡眠行動異常症 | 寝室に硬い物や危ない物を置かない。ベッドの柵や低いベッドを使い、転落やけがを防ぐ |
| 自律神経の症状 | 急に立ち上がらず、ゆっくり動く。水分をとり、便秘を防ぐ |
ゲームでいえば、画面のバグそのものを消すことはできなくても、バグが出にくいように明るさを調整したり、バグが出たときに一緒に確認したりすることで、冒険を続けやすくなります。
転倒を防ぐ工夫
レビー小体型認知症では、パーキンソン症状や立ちくらみ、認知機能の変動が重なり、転倒しやすくなります。転倒による骨折は、生活に大きな影響を与えるため、次のような工夫が大切です。
- 家の中の段差をなくす、手すりをつける
- 床に物を置かない
- 夜間のトイレまでの通路を明るくする
- 立ち上がるときは、一度座って落ち着いてから立つ
- 必要に応じて、杖や歩行器を使う
介護保険のサービスを利用して、手すりの設置などの住宅改修や、福祉用具のレンタルを行える場合もあります。
公認心理師の関わり
公認心理師は、主に心理検査と、本人・家族への支援を通して、レビー小体型認知症の方の生活を支えます。
神経心理学検査
認知症のタイプの見極めや、認知機能の程度を把握するために、さまざまな検査を行います。レビー小体型認知症では、記憶よりも、注意力や、物の形や位置を捉える力(視空間認知)が低下しやすいため、そうした特徴を捉える検査が役立ちます。
- HDS-R、MMSE:認知機能の全体像を把握するための検査です
- FAB:前頭葉の機能を中心に評価する検査です
- ノイズパレイドリアテスト:レビー小体型認知症に特徴的なパレイドリアを評価する検査です
- 時計描画テスト(CDT):時計を描いてもらうことで、視空間認知や計画する力などを評価します
検査の結果は、どのタイプの認知症かを見極めるための情報のひとつになるだけでなく、本人の得意なことや苦手なことを把握し、生活の工夫を考えるためにも活用されます。
本人・家族への支援
検査の結果をわかりやすく伝え、その方の認知機能に合わせた日常生活の工夫を提案します。特に、幻視や調子の波は、家族にとって理解しにくく、戸惑いやすい症状です。症状の背景にある病気の仕組みを伝え、接し方を一緒に考えることも、公認心理師の大切な役割です。
相談先と制度
- 地域包括支援センター:高齢者の暮らしの総合相談窓口です。まずはここに相談してみてください
- かかりつけ医・もの忘れ外来・認知症疾患医療センター:診断や治療について相談できます
- 介護保険サービス:要介護認定を受けることで、デイサービスや訪問介護、住宅改修などを利用できます
- 家族会・認知症カフェ:同じ立場の家族と悩みを共有できる場です
レビー小体型認知症は、幻視や調子の波など、家族が戸惑いやすい症状が多い病気です。家族だけで抱え込まず、こうした相談先を頼ってください。
まとめ
- レビー小体型認知症は、幻視、認知機能の変動、パーキンソン症状、レム睡眠行動異常症を特徴とする認知症です
- アルツハイマー型認知症と違い、初期には物忘れが目立たないことが多く、ほかの病気と間違えられやすい病気です
- 抗精神病薬に過敏に反応しやすいため、受診のときには必ず診断名を伝えることが大切です
- 薬物療法に加えて、症状に合わせた接し方や、転倒を防ぐ工夫が、生活を支える攻略法になります
特に幻視は、周りの人が理解していないと、本人が何をしているのかわからず、家族であっても否定的に見てしまうことがあります。最も大切なのは、症状の背景にある病気の仕組みを理解し、本人の困りごとに寄り添うことです。レビー小体型認知症の方は「困った人」ではなく「困っている人」です。幻視が見えていても、それは本人にとってリアルな体験であり、否定するのではなく受け止めることが大切です。
よくある質問
Q. 幻視は否定しないほうがいいのでしょうか?
頭ごなしに否定すると、本人は「誰もわかってくれない」と不安や混乱を強めてしまいます。「そう見えているんだね」と本人の体験を受け止めたうえで、照明を明るくしたり、見間違えやすい物を片づけたりする工夫をしてみてください。本人が「見えているけれど本物ではない」と理解できる場合もあります。
Q. どのくらいのスピードで進みますか?
進み方には個人差があります。調子の波があるため、良くなったり悪くなったりをくり返しながら、全体としてはゆっくり進んでいくことが多いです。転倒や体の病気をきっかけに、状態が大きく変わることもあるため、体調管理が大切です。
Q. パーキンソン病と言われましたが、レビー小体型認知症と関係がありますか?
レビー小体型認知症とパーキンソン病は、同じ「レビー小体病」の仲間と考えられています。パーキンソン病の経過の中で、物忘れや幻視が現れることもあります。気になる変化があるときは、主治医に相談してください。
▶ 次のステップ
③ つらさが続くときは、ひとりで抱えない
日常生活に支障が出ているときは、医療機関や相談窓口を頼ってください。相談先の探し方、こころの健康相談統一ダイヤル(厚生労働省)も参考にしてください。
参考文献
- McKeith, I. G., et al. (2017). Diagnosis and management of dementia with Lewy bodies: Fourth consensus report of the DLB Consortium. Neurology, 89(1), 88-100.
- 黒川由紀子・扇澤史子(編). (2018). 認知症の心理アセスメント はじめの一歩. 医学書院.
- 河野和彦. (2016). ぜんぶわかる認知症の事典: 4大認知症をわかりやすくビジュアル解説. 成美堂出版.
- 川畑智. (2021). マンガでわかる! 認知症の人が見ている世界. 文響社.
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