筋弛緩法のやり方|体のこわばりと不安をほぐす漸進的筋弛緩法

青空の広場で体の力を抜いて休む男女の読者と、黒柴のだびで。握った手から開いた手への変化で筋弛緩法を表しています。 メンタルヘルス

「気がついたら、肩が耳のほうまで上がっていた」

「仕事が終わると、あごがだるくなっている」

そんな経験はありませんか。これは、あなたの気の持ちようの問題ではありません。不安やストレスを感じているとき、私たちの体は知らないうちに力が入っています。しかも、このこわばりは自分ではなかなか気づけません。

RPGに例えるなら——ステータス画面を開かないと見えない「こわばりの蓄積デバフ」のようなものです。

そこで役に立つのが筋弛緩法(漸進的筋弛緩法)です。筋肉に「わざと力を入れて、一気に抜く」ことをくり返して、体のこわばりと一緒に気持ちの緊張もほぐしていく方法です。腹式呼吸がしっくりこなかった方や、考えごとが止まらずリラックスしにくい方にも取り組みやすい方法です。

この記事でわかること

  • 筋弛緩法の仕組みと、わざと力を入れる理由
  • 研究でわかっていること・まだわかっていないこと
  • 7部位で行う基本のやり方と、16部位の完全版
  • 短縮版と、日常での使い方
  • うまくいかないときの対処と注意点

注意: この記事は公認心理師の立場から情報提供を目的として書いています。
診断・治療の断言はできません。気になる症状がある場合は、必ず専門家にご相談ください。


筋弛緩法(漸進的筋弛緩法)とは?

ジェイコブソンが考案した「力を入れて、抜く」方法

筋弛緩法は、アメリカの医師エドモンド・ジェイコブソンが考案したリラクセーション法です。ジェイコブソンは筋肉の緊張と心の状態の関係を長年研究し、1929年に著書『Progressive Relaxation(漸進的弛緩法)』として発表しました。

ジェイコブソンの考え方はシンプルです。

  • 不安を感じると、体の筋肉が緊張する
  • 筋肉の緊張が、さらに不安な感覚を強める
  • だから、筋肉をゆるめることで不安もやわらげられる

「漸進的」というのは、「体の部位を一つずつ、順番に進めていく」という意味です。ジェイコブソンのもとの方法は習得に長い時間がかかるものでしたが、その後、多くの研究者が手順を短くし、今では心理療法の現場で広く使われる方法になっています。

なぜわざわざ力を入れるのか

「リラックスしたいのに、なぜ力を入れるの?」と思うかもしれません。理由は2つあります。

1つ目は、緊張とゆるみの「差」を感じ取るためです。 ふだんの私たちは、自分の体がどれくらい緊張しているのかに気づきにくいものです。一度ぎゅっと力を入れてから抜くと、「緊張している状態」と「ゆるんでいる状態」の違いがはっきりわかります。これをくり返すうちに、日常の中でも「あ、今、肩に力が入っているな」と気づけるようになります。

2つ目は、力が抜けた感覚をつかみやすくするためです。 一度しっかり力を入れてから抜くと、ただ「力を抜こう」とするよりも、ゆるんだ感覚に気づきやすいと考えられています。

腹式呼吸との違いと使い分け

リラクセーション法の代表として、もう一つ腹式呼吸があります。どちらが優れているというより、場面や相性で使い分けるのがおすすめです。

腹式呼吸 筋弛緩法
働きかけるところ 呼吸 筋肉
必要な時間 1〜5分 基本の手順で15〜20分(短縮版は数分)
人前でできるか できる 短縮版ならできる
向いている人 すぐに落ち着きたい人 体のこわばりが強い人、考えごとが止まりにくい人

筋弛緩法は「次はこの部位」と手順がはっきりしているため、頭の中がぐるぐるしやすい方でも、手順に集中しやすいのが特徴です。腹式呼吸のやり方は、腹式呼吸の解説記事で詳しく紹介しています。


筋弛緩法の研究でわかっていること

ストレス・不安・抑うつへの効果

成人を対象にした筋弛緩法の研究をまとめたシステマティックレビューでは、16か国・46件の研究(計3,400人以上)が調べられ、筋弛緩法がストレス・不安・抑うつを減らすことが示されています。また、筋弛緩法をほかの方法と組み合わせると、効果がより高まることも報告されています(Muhammad Khir et al., 2024)。

睡眠への効果

筋弛緩法は、眠る前のリラクセーションとしてもよく使われます。睡眠の質についての研究をまとめたレビューでは、対象となった7件の研究すべてで、筋弛緩法のあとに睡眠の質が改善していました(Farida et al., 2025)。

ただし、このレビューの対象は入院中の患者さんなどが中心で、練習の期間や回数も研究ごとにばらばらでした。「不眠に悩む人なら誰にでも効く」とまではいえない点には注意が必要です。眠れない状態が続いている場合は、不眠症の解説記事もあわせてご覧ください。

不安症の治療の中での位置づけ

筋弛緩法は、心理療法の中でも使われています。代表的なのが、スウェーデンの心理学者エーストが開発した応用リラクセーションです。筋弛緩法を土台にして、不安を感じ始めたらすぐに体をゆるめられるように段階的に練習していく方法で、全般不安症に対して効果が確かめられている治療の一つとされています(Hayes-Skelton et al., 2013)。全般不安症の人を対象にした研究では、応用リラクセーションと認知療法のどちらでも大きな改善がみられ、その効果は1年後も保たれていました(Öst & Breitholtz, 2000)。

まだわかっていないこと

一方で、限界もあります。筋弛緩法の研究は、がんや呼吸器の病気など、体の病気を抱える患者さんを対象にしたものが多く、研究の質にもばらつきがあります。たとえば、がん患者さんを対象にした研究のまとめでは、不安への効果は認められたものの、エビデンスの質は「中程度〜非常に低い」と評価されています(CAM-Cancer Consortium)。

まとめると、筋弛緩法は「これだけで何でも治る」方法ではありませんが、長い歴史があり、根拠も積み重ねられてきたセルフケアといえます。


筋弛緩法のやり方【基本ステップ】

準備:場所・服装・姿勢

  • 時間:最初は15〜20分ほど確保できるときに練習しましょう。
  • 場所:静かで、途中で邪魔が入りにくい場所を選びます。
  • 服装:ベルトやきつい服はゆるめ、メガネや腕時計は外しておきます。
  • 姿勢:背もたれのある椅子に深く座るか、仰向けに寝ます。眠る前に行うなら、布団の上でそのまま行ってかまいません。

基本のリズム:「入れる → 抜く → 味わう」

どの部位でも、次のリズムで行います。

  1. 力を入れる(5〜7秒):痛くない程度、6〜7割くらいの力で筋肉に力を入れます。その部位の「張っている感じ」に注意を向けます。
  2. 一気に抜く:「ストン」と一気に力を抜きます。ゆっくり抜くのではなく、一瞬で手放すのがコツです。
  3. ゆるんだ感覚を味わう(20〜30秒):力が抜けたあとの「じんわりする」「温かい」「重たい」といった感覚に注意を向けます。

標準的な手順では、ゆるめる時間を30〜40秒とることもあります。最初は、ゆるめる時間を力を入れる時間より長めにとることだけ意識すれば十分です。

力を5〜7秒入れ、ストンと抜き、20〜30秒ゆるんだ感覚を味わう筋弛緩法の基本リズム。

7部位の基本手順

最初は、体を7つのグループに分けた手順から始めるのがおすすめです。各部位を1〜2回ずつ行います。

順番 部位 力の入れ方
1 利き手側の腕 こぶしを握り、ひじを曲げて力こぶを作る
2 反対側の腕 1と同じ
3 顔 眉を上げる → 目をぎゅっと閉じる → 歯を軽くかみしめて口角を横に引く(まとめて行ってもよい)
4 首 あごを軽く引き、胸に近づける(つけなくてよい)
5 肩・背中・お腹 肩をすくめて耳に近づけ、肩甲骨を寄せ、お腹に力を入れて固くする
6 利き足側の脚 ひざを伸ばして太ももに力を入れ、つま先を手前(すね側)に引く
7 反対側の脚 6と同じ
利き手側の腕、反対側の腕、顔、首、肩・背中・お腹、利き足側の脚、反対側の脚の順に行う筋弛緩法の動作ガイド。

すべて終わったら、体全体がゆるんでいる感覚を1〜2分味わいます。最後に、手を握ったり開いたり、軽く伸びをしたりしてから、ゆっくり起き上がりましょう。急に立ち上がると、ふらつくことがあります。

【補足】16部位の完全版

慣れてきて、もっと細かく行いたい方は、次の16部位の手順も試してみてください。心理療法の現場で標準的に使われている手順をもとにしています。

順番 部位 力の入れ方
1 利き手と前腕 こぶしを握る
2 利き腕の上腕 ひじを曲げて力こぶを作る
3 反対側の手と前腕 こぶしを握る
4 反対側の上腕 ひじを曲げて力こぶを作る
5 額 眉を上げる
6 目・鼻のまわり 目をぎゅっと閉じ、鼻にしわを寄せる
7 口・あご 歯を軽くかみしめ、口角を横に引く
8 首・のど あごを軽く引き、胸に近づける
9 胸・肩・背中 肩甲骨を寄せる
10 お腹 お腹に力を入れて固くする
11 利き脚の太もも ひざを伸ばして太ももに力を入れる
12 利き脚のふくらはぎ つま先を手前に引く
13 利き足 足の指を軽く丸める(つりやすいので弱めに)
14 反対側の太もも 11と同じ
15 反対側のふくらはぎ 12と同じ
16 反対側の足 13と同じ

よくあるつまずきと対処法

  • 力を入れすぎて、足がつる・痛む:力は6〜7割で十分です。ふくらはぎや足の裏はつりやすいので、特に弱めにしましょう。
  • ゆっくり力を抜いてしまう:「ストン」と一気に抜くほうが、ゆるんだ感覚がわかりやすくなります。
  • どこに力が入っているのかよくわからない:最初はそれで大丈夫です。くり返すうちに、緊張とゆるみの違いがわかるようになります。
  • 途中で眠ってしまう:眠る前なら、そのまま眠ってかまいません。日中に練習したいときは、座った姿勢で行いましょう。
  • 考えごとが浮かんでくる:自然なことです。気づいたら、今取り組んでいる部位の感覚に注意を戻しましょう。

慣れてきたら:短縮版と日常での使い方

どんなスキルも、練習を重ねるほど、短い時間で発動できるようになります。筋弛緩法も同じで、慣れてきたら少しずつ手順を短くして、日常の中で使える形にしていきます。

① 短縮版:7部位 → 4部位へ

7部位の手順に慣れてきたら、さらに4つのグループにまとめた手順に進みます。

  1. 両腕:両手でこぶしを握り、力こぶを作る
  2. 顔と首:顔全体に力を入れ、あごを引く
  3. 胴体:肩をすくめ、肩甲骨を寄せ、お腹に力を入れる
  4. 両脚:両ひざを伸ばし、つま先を手前に引く

4部位なら数分で終わるので、忙しい日でも続けやすくなります。

② 力を入れずに「抜くだけ」で緩める

短縮版にも慣れてきたら、力を入れる段階を省いて、力を抜くことだけを練習します。腕から脚まで順番に注意を向けて、「今、ここに力が入っているな」と気づいたら、その部位をゆるめていきます。

緊張とゆるみの違いがわかるようになっていれば、わざわざ力を入れなくても、ゆるめられるようになっているはずです。

③ 合図ひとつで緩める

さらに進んだ段階では、吐く息と一緒に、心の中で「リラックス」と唱えながら全身の力を抜く練習をします。これをくり返すと、「リラックス」という言葉が体をゆるめる合図になっていきます。

応用リラクセーションでは、最終的には20〜30秒ほどで体をゆるめられることを目指します。呼吸の合わせ方は、腹式呼吸の解説記事も参考にしてください。

7部位から4部位、力を抜くだけ、吐く息と合図でゆるめる練習へ、自分のペースで進む流れ。

④ 場面別の使い方

  • 眠る前:布団の中で、7部位または4部位の手順を行います。「眠らなきゃ」とがんばらず、体を休める時間と考えましょう。
  • 仕事や勉強の合間:座ったまま、肩だけをすくめて「ストン」と落とすのを2〜3回。デスクワークで固まった体のリセットになります。
  • 緊張する場面の前:トイレや休憩スペースで、こぶしを握って抜く、肩をすくめて抜く、を数回行います。

練習を続けるには、活動記録表で記録をつけるのがおすすめです。練習した時間帯に印をつけ、前後の緊張の度合いを0〜100で書いておくと、自分に合った使い方が見えてきます。


注意点と、うまくいかないときは

けがや痛み、持病がある部位は飛ばす

首や腰を痛めたことがある方、足がつりやすい方は、その部位には力を入れすぎないか、手順から外してかまいません。けがの治療中の方、関節や筋肉の病気がある方、妊娠中の方は、始める前に主治医に相談しておくと安心です。

リラックスしようとして、かえって不安になる場合

リラクセーションの練習中に、かえって不安や緊張が強くなる人がいます。これは「リラクセーション誘発性不安」と呼ばれる現象です。研究では、筋弛緩法は瞑想に比べてこうした反応が起こりにくかったという報告もありますが(Heide & Borkovec, 1983)、まったく起こらないわけではありません。

もし不安が強くなったら、目を開けたまま行う、短縮版で短く行うなどの工夫を試してみてください。それでも合わない場合は、別の方法に切り替えて大丈夫です。詳しい対処法は、腹式呼吸の解説記事の注意点でも紹介しています。

運転中や作業中には行わない

基本の手順(7部位・16部位)を行うと、深くリラックスして眠くなることがあります。運転中や機械を操作しているときではなく、安全な場所で行いましょう。

専門家への相談を考えてほしいサイン

次のような場合は、セルフケアだけで抱え込まず、専門家への相談を考えてみてください。

  • 不安や緊張のために、仕事・学校・睡眠などに支障が出る状態が続いている
  • 筋弛緩法などのセルフケアを続けても、つらさがあまり変わらない
  • 肩こりや頭痛、体の痛みが強い(体の病気が隠れていないか、まず内科などで確認しましょう)

相談先の選び方は、カウンセリングはどこで受ける?の解説記事を参考にしてください。


まとめ

この記事で解説した内容を振り返ります。

  • 筋弛緩法(漸進的筋弛緩法)は、筋肉にわざと力を入れてから一気に抜くことで、体と心の緊張をほぐす方法です。
  • 力を入れるのは、緊張とゆるみの差を感じ取り、より深くゆるめるためです。
  • 研究では、ストレス・不安・抑うつの軽減や睡眠の改善が報告されています。不安症の治療の中でも使われてきた、歴史のある方法です。
  • まずは7部位の基本手順から始め、慣れてきたら4部位、抜くだけ、合図で緩める、と短くしていきましょう。
  • けがのある部位は無理をしないこと、合わなければほかの方法に切り替えることも大切です。

筋弛緩法を続けていくと、「今、肩に力が入っているな」と自分の体の状態に気づけるようになります。いわば、こまめに自分のステータス画面を確認する習慣です。こわばりが小さいうちに気づいてゆるめられれば、ストレスをため込みすぎずにすみます。

完璧な手順でなくてもかまいません。すぐに気持ちを落ち着けたい場面では腹式呼吸も組み合わせながら、つらさが続くときは一人で抱えずに専門家を頼ってください。

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監修:公認心理師・だびで | だびでの心理室


参考文献

  • Bernstein, D. A., Borkovec, T. D., & Hazlett-Stevens, H. (2000). New directions in progressive relaxation training: A guidebook for helping professionals. Praeger.
  • CAM-Cancer Consortium. (n.d.). Progressive muscle relaxation. https://cam-cancer.org/progressive-muscle-relaxation
  • Farida, N., Bakar, A., & Pratiwi, I. N. (2025). Effectiveness of progressive muscle relaxation on sleep quality: A systematic review. Dunia Keperawatan, 13(2), 191–197. https://doi.org/10.20527/dk.v13i2.253
  • Hayes-Skelton, S. A., Roemer, L., Orsillo, S. M., & Borkovec, T. D. (2013). A contemporary view of applied relaxation for generalized anxiety disorder. Cognitive Behaviour Therapy, 42(4), 292–302. https://doi.org/10.1080/16506073.2013.777106
  • Heide, F. J., & Borkovec, T. D. (1983). Relaxation-induced anxiety: Paradoxical anxiety enhancement due to relaxation training. Journal of Consulting and Clinical Psychology, 51(2), 171–182. https://doi.org/10.1037/0022-006X.51.2.171
  • Jacobson, E. (1929). Progressive relaxation. University of Chicago Press.
  • Muhammad Khir, S., Wan Mohd Yunus, W. M. A., Mahmud, N., Wang, R., Panatik, S. A., Mohd Sukor, M. S., & Nordin, N. A. (2024). Efficacy of progressive muscle relaxation in adults for stress, anxiety, and depression: A systematic review. Psychology Research and Behavior Management, 17, 345–365. https://doi.org/10.2147/PRBM.S437277
  • Öst, L.-G. (1987). Applied relaxation: Description of a coping technique and review of controlled studies. Behaviour Research and Therapy, 25(5), 397–409. https://doi.org/10.1016/0005-7967(87)90017-9
  • Öst, L.-G., & Breitholtz, E. (2000). Applied relaxation vs. cognitive therapy in the treatment of generalized anxiety disorder. Behaviour Research and Therapy, 38(8), 777–790. https://doi.org/10.1016/S0005-7967(99)00095-9

※本記事は上記文献をもとに、公認心理師・だびでが執筆時点(2026年11月)の情報で構成しています。

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