【公認心理師が解説】アサーションの練習方法|DESC法の書き方と場面別の例文(断る・頼む・伝える)

DESC法の4ステップを使ってアサーションの練習をする女性と黒柴のだびで 認知行動療法

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「断りたいのに、口から出てくるのは『大丈夫です』」

「お願いしたいことがあるのに、どう切り出せばいいかわからない」

「我慢していたら、ある日ついきつい言い方で爆発してしまった」

アサーション(自分も相手も大切にする伝え方)の考え方を知っても、いざ言葉にしようとすると手が止まってしまう。そんな方は多いのではないでしょうか。

先に結論を言うと、言いにくいことは、その場のひらめきで言うより、前もって「セリフ」を組み立てて練習しておくほうが伝えやすくなります。 そのための型がDESC法です。

RPGでいえば、強敵との会話イベントの前に、セーブポイントでセリフを準備しておくようなものです。この記事では、公認心理師の立場から、DESC法の書き方の4つのポイントと、「断る・頼む・伝える」の3つの場面の例文を紹介します。実際に書くときは、無料のアサーション練習シートを使ってみてください。

→ アサーションそのものの考え方や、「攻撃的・非主張的・アサーティブ」の3つのタイプについては、【公認心理師が解説】「ちゃんと伝える」ってむずかしい?――心がラクになる“アサーション”で解説しています。

アサーションの練習を始める前の3つの前提

DESC法の書き方に入る前に、練習をラクにするための3つの前提を確認しておきましょう。

①言えないのは性格ではなく「まだ練習していないスキル」

「自分は気が弱いから言えない」と考えてしまう方もいますが、アサーションは練習によって身につけていくコミュニケーションのスキルです。アサーション・トレーニングは1970年代から心理療法の中で研究されてきた方法で、主張的な行動を増やしたり、不安や抑うつなどの症状をやわらげたりする効果が報告されています(Speed et al., 2018)。ただし、研究の多くは古い時代のもので、新しい研究が必要だとも指摘されています。

大切なのは、「言えない自分」を責めることではなく、小さな場面から練習を重ねることです。

②相手の返事は、自分では決められない

アサーションは、相手を思いどおりに動かすための話し方ではありません。どんなにていねいに伝えても、相手がNoと言うことはあります。

ゴールを「相手にYesと言わせること」にすると、断られたときに「やっぱり言わなければよかった」と感じやすくなります。ゴールは「自分の気持ちと提案を、相手に届く形で伝えられたかどうか」に置きましょう。

③「今は言わない」と選ぶこともアサーション

アサーションは「いつでも何でも言う」ことではありません。相手の状態や場面を考えたうえで、自分で「今回は言わない」と決めるのも、自分を大切にした選択です。

ただし、暴力・ハラスメント・脅しなどがあり、伝えることで身の危険がある関係では、練習した言い方で一人で向き合う必要はありません。安全を最優先にして、信頼できる人や専門の相談窓口に相談してください。

DESC法の書き方|4つの記入ポイント

DESC法は、伝えたいことをD・E・S・Cの4つのパーツに分けて組み立てる方法です。アメリカのシャロン・バウアーと心理学者ゴードン・バウアーが著書『Asserting Yourself』で紹介し、日本でも平木典子さんのアサーション・トレーニングの本などで紹介されています。

ここでは、職場で急な仕事を頼まれた場面を例に、書き方のポイントを見ていきます。

D(Describe):評価や推測を入れず「事実」だけを書く

Dでは、話題にしたい出来事を、誰が見ても同じように見える事実として書きます。ここで「いつも」「ちゃんと」「わざと」といった評価や推測が入ると、相手は話の最初から「責められている」と感じやすくなります。

  • ✗ いつも急に仕事を押しつけますよね(「いつも」「押しつける」が評価)
  • ○ 定時の30分前に、明日までの資料作成を頼まれました(日時と内容だけ)

迷ったときは、「動画に撮ったら映っていること」だけが書けているかを確かめてみてください。

E(Express):「私は」を主語にして気持ちを書く

Eでは、その事実について自分がどう感じているか、どんな状況にあるかを書きます。ポイントは、主語を「あなた」ではなく「私」にすることです。「あなたは配慮が足りない」は相手への評価ですが、「私は困っている」は自分の気持ちの報告なので、相手も受け取りやすくなります。

  • ✗ 迷惑なんですけど
  • ○ 今週は残業が続いていて、今日引き受けると資料の質が下がってしまいそうで心配です

気持ちを言葉にするのが難しいときは、「不安」「困っている」「残念」「助かる」など、短い言葉を1つ選ぶだけでもかまいません。

S(Specify):提案は具体的に、小さく、1つに絞る

Sでは、相手にしてほしいことを具体的に提案します。「もう少し考えてほしい」「ちゃんとしてほしい」のようなあいまいなお願いは、相手が何をすればいいのか伝わりません。

  • ✗ もう少し考えてください
  • ○ 明日の午後からなら取りかかれるので、締め切りを明日の夕方にしてもらえますか

言いたいことがいくつもあるときほど、今回伝えるお願いを1つに絞るのがコツです。お願いが小さいほど、相手も「はい」と言いやすくなります。

C(Consequences / Choose):Yesのとき・Noのときの次の一手を考える

Cは、原典では「Consequences(結果)」で、提案を受け入れてもらえたときによくなることを伝えるパーツです。日本の解説では「Choose(選択する)」として、相手の返事に応じた次の選択肢を考えるパーツとして紹介されることもあります。

練習シートでは、両方の考え方を取り入れて、相手がYesのとき・Noのときの両方を書いておく形にしています。

  • Yesのとき:助かります。午後一番で取りかかります
  • Noのとき:では、急ぎの部分だけ今日やって、残りを明日に回すのはどうでしょう

Noのときの一手を先に考えておくと、断られても頭が真っ白になりにくく、話し合いを続けやすくなります。

4つをつなげると、1つのセリフになる

D・E・S・Cをつなげると、次のようなセリフになります。

定時の30分前に、明日までの資料作成を頼まれました。今週は残業が続いていて、今日引き受けると資料の質が下がってしまいそうで心配です。明日の午後からなら取りかかれるので、締め切りを明日の夕方にしてもらえますか。

長く感じる場合は、声に出して読みながら短く削ってかまいません。アサーション練習シートでは、4つのパーツを書くと自動で1つのセリフにまとまり、「いつも」「なんで」など相手が責められていると感じやすい言葉が入っていると、ヒントが表示されます。

例文1:職場で追加の仕事を断りたい

場面: 同僚から「この件、代わりにやってもらえない?」と頼まれました。自分の担当業務で手いっぱいで、引き受けると締め切りに間に合いそうにありません。

いつもの言い方

  • 攻撃的:自分の仕事くらい自分でやってよ
  • 非主張的:……うん、大丈夫(あとで残業して抱え込む)

DESCで組み立てると

  • D:今、A社の資料を金曜までに仕上げる担当になっているんだ
  • E:今週はそれで手いっぱいで、引き受けると両方が中途半端になりそうで心配なんだ
  • S:今回は引き受けられないけど、進め方のアドバイスなら10分くらいならできるよ
  • C(Yes):じゃあ、15時から少し話そうか
  • C(No):来週の月曜以降なら手伝えるから、そのタイミングでよければまた声をかけて

ポイント: 断るときは、「できないこと」と一緒に「できること」を1つ添えると、相手を突き放す印象がやわらぎます。ただし、できることがない場合は無理に作らなくて大丈夫です。

例文2:家族やパートナーに家事の分担をお願いしたい

場面: 共働きなのに、夕食の片づけをほぼ毎日自分がしています。不満がたまってきて、そろそろ爆発しそうです。

いつもの言い方

  • 攻撃的:なんで私ばっかりやらなきゃいけないの?全然手伝わないよね
  • 非主張的:(何も言わずに、ため息をつきながら片づける)

DESCで組み立てると

  • D:今週は、夕食の片づけを私が毎日していたよ
  • E:私は平日の夜が一番疲れていて、少ししんどく感じているの
  • S:火曜と木曜の片づけをお願いできるかな
  • C(Yes):ありがとう、その日はゆっくり休めそう
  • C(No):じゃあ、どの曜日ならできそうか一緒に決めたいな

ポイント: 我慢を重ねたあとは、「なんで」「全然」など、責める言葉が出やすくなります。爆発する前の、まだ落ち着いて話せるうちに、小さなお願いから伝えてみましょう。

例文3:友人の遅刻が続くモヤモヤを伝えたい

場面: 仲のよい友人が、待ち合わせのたびに20分ほど遅れてきます。関係は大切にしたいけれど、モヤモヤがたまっています。

いつもの言い方

  • 攻撃的:毎回遅れるとか、時間にルーズすぎない?
  • 非主張的:全然待ってないよ!(本当は寒い中で20分待っていた)

DESCで組み立てると

  • D:この3回、待ち合わせに20分くらい遅れて来ていたよね
  • E:私は、待っている間に何かあったのかなと心配になったし、少し寂しかったんだ
  • S:遅れそうなときは、わかった時点でひとこと連絡をもらえるとうれしい
  • C(Yes):ありがとう、それなら安心して待てる
  • C(No):じゃあ、待ち合わせ場所をカフェにして、待つ間も過ごしやすくしよう

ポイント: 大切な相手ほど「関係を壊したくない」と言えなくなりがちです。Eで「心配だった」「寂しかった」という本当の気持ちを伝えると、相手を責める話ではなく、関係を大切にしたい気持ちとして届きやすくなります。

それでもうまく言えないときは?

セリフを準備しても、いざとなると言えないことはあります。それは失敗ではなく、練習の途中です。よくあるつまずきと対処法を紹介します。

「言ったら嫌われる」という考えが浮かぶとき

言えない背景には、「嫌われるかもしれない」「わがままだと思われる」といった考えがあることが少なくありません。こうした考えは事実とは限らず、不安が強いときに浮かびやすい「考え方のクセ」であることもあります。

その考えが強くて動けないときは、認知再構成法シートで「本当にそうなるのか」を検討してみるのもひとつの方法です。考え方のクセについては、思考の癖に気づく|認知行動療法(CBT)で学ぶ10の思考パターンでも解説しています。

感情が強すぎて、冷静に話せそうにないとき

怒りや悲しみが強いときに話すと、準備したセリフよりも感情が先に出てしまいがちです。気持ちが落ち着くまで時間をおく、話す前に深呼吸をする、メッセージや手紙で伝える、といった方法も選べます。

人間関係のストレスへの対処の手札を増やしたいときは、ストレスコーピングとは?も参考にしてください。

言ったあとに、自分を責めてしまうとき

伝えたあとに「言いすぎたかも」「相手を傷つけたかも」と自分を責め続けてしまう方もいます。相手の反応には、相手の事情や気分など、自分ではコントロールできない要因も関わっています。

自分を責めすぎてしまうときは、「全部自分のせい」と思ってしまうのはなぜ?も読んでみてください。

一人で練習するのが難しいとき

相手役がいると、練習の効果は高まりやすくなります。信頼できる人にロールプレイを頼んだり、カウンセリングでアサーションを一緒に練習したりする方法もあります。人間関係のつらさが続いて、眠れない・食欲がないなど生活に影響が出ているときは、専門家に相談することも大切な選択肢です。

→ 相談先の選び方は、カウンセリングはどこで受ける?病院・相談室・オンラインの違いと選び方で紹介しています。

まとめ:正解のセリフより「伝えようとした一歩」を大切に

  • 言いにくいことは、前もって「セリフ」を組み立てておくと伝えやすくなります
  • D(事実)は評価を入れず、E(気持ち)は「私は」を主語に、S(提案)は具体的に1つ、C(次の一手)はYes・Noの両方を考えます
  • 相手の返事は自分では決められません。ゴールは「伝えられたかどうか」です
  • 「今は言わない」と選ぶのもアサーションです。身の危険がある関係では、安全を最優先にしてください

アサーションは、一度で身につくものではありません。経験値をためるように、小さな場面で少しずつ試していくことで、「自分も相手も大切にする伝え方」が自然に選べるようになっていきます。

次の一歩

まずは、最近「本当は言いたかったのに言えなかった」場面を1つ思い出して、アサーション練習シートでセリフを組み立ててみてください。声に出して読むところまでできれば、今日の練習は十分です。

参考文献

  • Bower, S. A., & Bower, G. H. (2004). Asserting yourself: A practical guide for positive change (Updated ed.). Da Capo Press.
  • 平木典子. (2012). アサーション入門: 自分も相手も大切にする自己表現法. 講談社. [Amazon|楽天]
  • 平木典子. (2021). 三訂版 アサーション・トレーニング: さわやかな〈自己表現〉のために. 日本・精神技術研究所. [Amazon|楽天]
  • Speed, B. C., Goldstein, B. L., & Goldfried, M. R. (2018). Assertiveness training: A forgotten evidence-based treatment. Clinical Psychology: Science and Practice, 25(1), e12216. https://doi.org/10.1111/cpsp.12216
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