【公認心理師が解説】「全部自分のせい」と思ってしまうのはなぜ?自分を責めすぎる心の仕組みと抜け出す攻略法

夕暮れの道で荷物を下ろし、黒柴のだびでと遠くの街を見つめる女性のピクセルアート 認知行動療法

「あのとき、自分がもっとしっかりしていれば」

「みんなに迷惑をかけたのは、全部自分のせいだ」

仕事のミスや人間関係のトラブルのあと、こんなふうに自分を責め続けて、なかなか抜け出せないことはありませんか。

自分の行動を振り返ることは大切です。けれど、責任を感じる気持ちが強くなりすぎると、気分が落ち込み、次の一歩を踏み出す力まで削られてしまいます。

実際には、出来事の多くは自分ひとりではなく、周りの人・状況・タイミングなど、いくつもの要因が重なって起きています。それでも「全部自分のせい」と感じてしまう背景には、いくつかの心の仕組みがあります。

この記事では、自分を責めすぎてしまう3つの仕組みと、責任の大きさを見直す認知行動療法(CBT)の技法「責任のパイ(責任円グラフ)」を、記入例つきで解説します。ハードモードな場面ほど、責任の判定を一度見直すことが攻略の手がかりになります。

だびで
だびで

自分を責めてしまうのは、それだけ真剣に向き合っている証拠でもあります。責任を「ゼロ」にするのではなく、「ちょうどいい大きさ」に戻す方法を一緒に見ていきましょう。

この記事でわかること

  • 「全部自分のせい」と感じてしまう3つの心の仕組み
  • 罪悪感と恥の違いと、立て直しやすさの関係
  • 責任のパイ(責任円グラフ)のやり方と記入例
  • 責任が残ったときの向き合い方
  • 専門家に相談したほうがよいサイン

注意: この記事は公認心理師の立場から情報提供を目的として書いています。診断・治療の断言はできません。気になる症状がある場合は、必ず専門家にご相談ください。

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「全部自分のせい」と思ってしまうのはどんな状態?

責任を感じること自体は悪いことではない

何か良くないことが起きたとき、自分の行動を振り返って「ここは自分の責任だった」と考えるのは、自然で大切なことです。責任を引き受けられることは、人との信頼関係を保ったり、同じことが起きないように工夫したりする力にもなります。

苦しくなるのは、責任の感じ方が実際の出来事よりも大きくなりすぎて、気持ちや生活を圧迫しているときです。

自分を責めすぎているサイン

次のような状態が続いているときは、責任を1か所に集めすぎているかもしれません。

  • 関わった人が何人もいるのに、「自分のせいだ」としか思えない
  • 同じ出来事を何度も思い出しては、自分を責めてしまう
  • 「あのとき〇〇していれば」と、過去の判断を繰り返し悔やむ
  • 周りから「あなたのせいじゃない」と言われても、まったく納得できない
  • 謝ったり対処したりしたあとも、罪悪感がずっと消えない
  • ミスをきっかけに「自分はダメな人間だ」と、自分全体を否定してしまう

いくつか当てはまっても、それだけで何かの病気というわけではありません。ただ、こうした考え方の背景には、いくつかの共通した仕組みがあります。

なぜ自分を責めすぎてしまうのか?3つの仕組み

認知行動療法では、出来事そのものだけでなく、その出来事をどう受け止めたか(認知)が、気分や行動に影響すると考えます。自分を責めすぎてしまうときには、次のような仕組みが働いていることがあります。

①個人化:関係の薄い出来事まで自分に結びつける

認知療法を体系化したアーロン・ベックらは、うつ状態のときに見られやすい考え方の偏りの一つとして「個人化」を挙げています(ベックほか, 1979/2007)。個人化とは、はっきりした根拠がないのに、身の回りで起きた出来事を自分と結びつけて考えてしまうことです。

  • 上司の機嫌が悪い →「自分が何か悪いことをしたからだ」
  • チームの企画が通らなかった →「自分の資料のせいだ」
  • 友人が元気がない →「自分の言い方がきつかったからだ」

本来は複数に分かれるはずのダメージを、すべて自分が受けてしまう。責任の判定に、そんな「バグ」が起きている状態とも言えます。個人化を含む10の思考パターンについては、「思考の癖に気づく|認知行動療法(CBT)で学ぶ10の思考パターン」で詳しく解説しています。

②後知恵バイアス:結果を知った今の目で、過去の自分を裁く

心理学者のフィッシュホフは、結果を知った人ほど「その結果は最初から予測できた」と感じやすくなることを実験で示しました(Fischhoff, 1975)。これを後知恵バイアスと呼びます。

「あのとき気づけたはずだ」と感じるとき、私たちは今知っている情報を、当時の自分も持っていたかのように考えがちです。トラウマに関連した罪悪感を研究したクバニーらも、こうした後知恵による判断を、罪悪感を強める考え方の一つとして挙げています(Kubany & Manke, 1995)。

当時の自分がどんな情報を持ち、どんな選択肢の中で判断していたのか。「今わかっていること」と「そのときわかっていたこと」を分けて考えるだけでも、責任の見え方が変わることがあります。

③「影響した」と「責任がある」を同じものと考えてしまう

自分の行動が結果に少しでも影響していると、「影響した=全部自分の責任」と考えてしまうことがあります。けれど、ある結果に影響した要因は、自分の行動だけではありません。相手の判断、時間の制約、偶然のタイミングなど、自分ではコントロールできなかった要因も含まれています。

強迫症の認知行動モデルでは、悪い結果を防ぐ責任を実際以上に感じる「過剰な責任感」が、確認や打ち消しの行動を強めると説明されています(Salkovskis, 1985)。日常の自分責めでも、自分がコントロールできた範囲を、実際より大きく見積もっていないかを確かめることが役に立ちます。

補足:「〜すべき」思考や完璧主義ともつながっている

「失敗してはいけない」「人に迷惑をかけるべきではない」といった厳しいルールを自分に課していると、ルールが守れなかったときに自分を強く責めやすくなります。完璧主義と自分責めのつながりについては、「完璧主義という『罠』の攻略法」で詳しく解説しています。

罪悪感と恥の違い:「悪いことをした」と「自分はダメだ」

自分を責めているときに感じる気持ちは、一つではありません。心理学では、よく似た気持ちとして「罪悪感」と「恥」を区別しています。

罪悪感は「行動」に、恥は「自分全体」に向く

感情研究者のタングニーらによると、罪悪感は「悪いことをしてしまった」と、自分の特定の行動に向く気持ちです。一方、恥は「自分はダメな人間だ」と、自分そのものに向く気持ちです(Tangney et al., 2007)。

罪悪感恥
向く先行動(「悪いことをした」)自分全体(「自分はダメだ」)
起こりやすい行動謝る・償う・やり直す隠れる・避ける・言い訳する、相手を責める
その後への影響行動を変えるきっかけになりやすい立て直しにくくなりやすい

恥が強いと、かえって立て直しにくくなる

タングニーらの研究では、罪悪感は謝罪や埋め合わせといった行動につながりやすい一方で、恥は隠れたい・逃げたいという気持ちや、怒り、他人への責任転嫁につながりやすいことが示されています(Tangney et al., 2007)。

つまり、「自分はダメだ」と自分全体を責めるほど、実際にできる対処からは遠ざかってしまうことがあります。自分を責めすぎないことは、責任から逃げることではなく、責任を果たすための土台づくりでもあります。

だびで
だびで

振り返る対象は「自分という人間」ではなく、「あのときの行動」です。行動なら、次から変えていくことができます。

逆パターン:「全部あの人のせい」も同じ仕組み

ここまで自分を責める場合を見てきましたが、反対に「全部あの人のせいだ」と相手を責め続けてしまうこともあります。向きは逆でも、責任を1か所に集めて考えているという点では、同じ仕組みが働いています。

相手への怒りが長く続くと、同じ場面を何度も思い出してしまい、自分自身も消耗していきます(ぐるぐる思考(反すう)の状態です)。相手の責任を確かめることは大切ですが、ほかの要因も含めて全体を眺めると、「相手に伝えるべきことはどこか」がはっきりすることもあります。気持ちや要望を相手に伝えたいときは、アサーション(自分も相手も大切にする伝え方)が参考になります。

このあと紹介する責任のパイは、自分を責めている場合にも、相手を責めている場合にも使えます。

責任を見直す攻略ルート:責任のパイ(責任円グラフ)

責任の感じ方を見直すために、認知行動療法では「責任のパイ(責任円グラフ)」という技法が使われます。セルフヘルプの代表的なワークブック『うつと不安の認知療法練習帳』では、罪悪感や恥を扱う章で紹介されています(グリーンバーガー・パデスキー, 2016/2017)。強迫症の認知療法でも、過剰な責任感を見直す方法として使われてきました(van Oppen & Arntz, 1994)。

責任のパイのやり方(5ステップ)

  1. 出来事を書く:何が起きたのかを、具体的に1つ書きます。
  2. 最初の責任を数字にする:いちばん責任があると思う相手(または自分)を決め、その責任が何%くらいだと感じるかを記録します。
  3. 関わった要因を書き出す:人だけでなく、時間の余裕、体調、情報不足、偶然のタイミングなども書き出します。
  4. ほかの要因から先に割り振る:いちばん責めている相手(自分)以外の要因に、それぞれ何%の責任があるかをつけます。
  5. 残りを見て、最初と比べる:100%からほかの要因の合計を引いた残りが、いちばん責めていた相手(自分)の分です。最初の数字と比べてみましょう。

いちばんのポイントは、自分(いちばん責めている相手)の分を最後に決めることです。先に自分の分を決めてしまうと、そこにほとんどの責任が集まってしまいます。

記入例:締め切りに間に合わなかったAさん

会社員のAさんは、担当していた資料の提出が締め切りに間に合わず、取引先に迷惑をかけてしまいました。「全部自分のせいだ」と考え、最初に感じた自分の責任は90%、罪悪感の強さも85%でした(架空の例です)。

関わった要因を書き出し、自分以外の要因から順に割り振ると、次のようになりました。

要因責任考えたこと
上司(日程の決定)25%無理のある日程を決めたのは上司だった
急な仕様変更20%取引先からの変更が、締め切りの3日前に入った
時間の余裕のなさ10%ほかの案件の締め切りと重なっていた
体調・疲れ10%寝不足が続いて、集中しにくかった
自分(残り)35%進み具合の共有が遅れた
責任のパイの記入例。最初に感じた自分の責任90%が、ほかの要因に割り振った結果35%になった円グラフ
ほかの要因から先に割り振ると、Aさんの責任は90%から35%になりました。

円グラフにしてみると、Aさんの責任は最初に感じていた90%ではなく、35%でした。Aさんの責任がなくなったわけではありません。それでも「全部ではなかった」と気づいたことで、あらためて感じる責任は40%、罪悪感の強さは55%まで下がりました。

そのうえでAさんは、自分の責任として残った「進み具合の共有が遅れた」部分について、「次からは締め切りの1週間前に状況を共有する」という対策を考えました。

だびで
だびで

数字は正確でなくても大丈夫です。大切なのは、ほかの要因を一つずつ検討していくプロセスそのものです。

無料ツールで試してみる

責任のパイは紙とペンでもできますが、当サイトでは、ブラウザ上で円グラフを作れる無料ツールを用意しています。数字を入れると残りが自動で計算され、最初に感じていた責任との比較や、振り返りまで一緒に進められます。入力した内容はどこにも送信されません。

👉 【無料ツール】責任のパイ(責任円グラフ)を使ってみる

責任が残ったときの向き合い方

責任のパイは、責任をゼロにするためのツールではありません。やってみて、自分の責任がある程度残ることもあります。そのときは、次の3つを意識してみてください。

「責任がある」と「価値がない」は別のこと

ある出来事に自分の責任があったとしても、それは「そのときの行動に改善できる点があった」ということです。「自分には価値がない」という意味ではありません。罪悪感と恥の違いで見たように、責める対象を自分全体から行動へと切り分けることで、次にとる行動を考えやすくなります。

謝る・やり直す・次に備える:「これからできること」を考える

残った責任は、これから何ができるかを考える手がかりになります。

  • 迷惑をかけた相手に、経緯を説明して謝る
  • やり直せる部分があれば、取り組む
  • 同じことが起きないように、手順や仕組みを見直す
  • 自分だけでは防げない部分は、周りに相談する

すでに十分に対処したあとも自分を責め続けてしまうときは、それ以上自分を罰しても、状況は良くならないことを思い出してください。

友だちに声をかけるように、自分に話しかける

心理学者のネフは、失敗したときや苦しいときに、自分に対して思いやりをもって接する態度を「セルフ・コンパッション」と呼んでいます(Neff, 2003)。セルフ・コンパッションは、自分を甘やかすこととは違います。失敗を認めながらも、必要以上に厳しく責めない態度のことです。

同じ失敗をした友だちに、あなたならどんな言葉をかけるでしょうか。その言葉を、自分にもかけてみてください。

こんなときは専門家に相談を

自分を責める気持ちは誰にでも起こりますが、次のようなときは、ひとりで抱えずに医療機関や専門家への相談を考えてください。

  • 自分を責める気持ちと、気分の落ち込みや興味の低下が2週間以上続いている:うつ病の症状の一つに「過剰な、または不適切な罪責感」があります(American Psychiatric Association, 2022/2023)。気になる方は「うつ病とは?」や、セルフチェックのQIDS-Jも参考にしてください。
  • 暴力・いじめ・ハラスメント・虐待など、被害を受けた出来事で自分を責めている:被害について、あなたが責任を探す必要はありません。トラウマ体験のあとに強い罪悪感が続くこともあります。「PTSDとは?」も参考にしてください。
  • 「何か起きたら自分の責任だ」という不安から、確認や打ち消しがやめられない:「強迫症とは?」で詳しく解説しています。
  • 自分を傷つけたい気持ちや、消えてしまいたい気持ちがある:セルフワークだけで抱えず、すぐに医療機関や相談窓口に連絡してください。

相談先に迷うときは、「カウンセリングはどこで受ける?」で選び方を紹介しています。今すぐ誰かに話を聞いてほしいときは、こころの健康相談統一ダイヤル(厚生労働省)なども利用できます。

まとめ:責任をゼロにせず、ちょうどいい大きさに戻そう

この記事で解説した内容を振り返ります。

  • 責任を感じること自体は自然で大切なこと。苦しくなるのは、責任が1か所に集まりすぎたとき
  • 「個人化」「後知恵バイアス」「影響と責任の混同」が、自分責めを強めることがある
  • 罪悪感は行動に、恥は自分全体に向く。行動に目を向けるほうが立て直しやすい
  • 責任のパイでは、ほかの要因から先に責任を割り振り、最後に自分の分を見る
  • 残った責任は、「これからできること」を考える手がかりにする

自分を責めすぎてしまうのは、それだけ真剣に向き合っている証拠でもあります。責任をなかったことにする必要はありません。出来事に見合った大きさに戻して、次の一歩につなげていきましょう。

まずは最近気になっている出来事を一つ選んで、責任のパイで責任の配分を確かめてみてください。それが、ハードモードな場面を攻略する最初の一歩になります。

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▶ 次のステップ

② もう少し深く学びたい人へ

うつと不安の認知療法練習帳 増補改訂版の表紙

『うつと不安の認知療法練習帳[増補改訂版]』

D・グリーンバーガー、C・A・パデスキー(著)/大野裕(監訳)/創元社(2017年)

この記事で紹介した責任のパイ(責任円グラフ)のワークシートが収録された、認知療法の代表的なワークブックです。罪悪感や恥を扱う章もあり、自分で練習を進めたいときの一冊です。

他の本は「だびでの本棚」で探す →

③ つらさが続くときは、ひとりで抱えない

日常生活に支障が出ているときは、医療機関や相談窓口を頼ってください。相談先の探し方、こころの健康相談統一ダイヤル(厚生労働省)も参考にしてください。

執筆・監修:公認心理師・だびで | だびでの心理室


参考文献

  • American Psychiatric Association. (2023). 『DSM-5-TR 精神疾患の診断・統計マニュアル』(日本精神神経学会, 日本語版用語監修; 髙橋三郎・大野裕, 監訳). 医学書院.(原著出版 2022) [Amazon|楽天]
  • Fischhoff, B. (1975). Hindsight is not equal to foresight: The effect of outcome knowledge on judgment under uncertainty. Journal of Experimental Psychology: Human Perception and Performance, 1(3), 288–299. https://doi.org/10.1037/0096-1523.1.3.288
  • Kubany, E. S., & Manke, F. P. (1995). Cognitive therapy for trauma-related guilt: Conceptual bases and treatment outlines. Cognitive and Behavioral Practice, 2(1), 27–61. https://doi.org/10.1016/S1077-7229(05)80004-5
  • Neff, K. (2003). Self-compassion: An alternative conceptualization of a healthy attitude toward oneself. Self and Identity, 2(2), 85–101. https://doi.org/10.1080/15298860309032
  • Salkovskis, P. M. (1985). Obsessional-compulsive problems: A cognitive-behavioural analysis. Behaviour Research and Therapy, 23(5), 571–583. https://doi.org/10.1016/0005-7967(85)90105-6
  • Tangney, J. P., Stuewig, J., & Mashek, D. J. (2007). Moral emotions and moral behavior. Annual Review of Psychology, 58, 345–372. https://doi.org/10.1146/annurev.psych.56.091103.070145
  • van Oppen, P., & Arntz, A. (1994). Cognitive therapy for obsessive-compulsive disorder. Behaviour Research and Therapy, 32(1), 79–87. https://doi.org/10.1016/0005-7967(94)90086-8
  • グリーンバーガー, D.・パデスキー, C. A. (2017). 『うつと不安の認知療法練習帳』(大野裕, 監訳; 岩坂彰, 訳; 増補改訂版). 創元社.(原著出版 2016) [Amazon|楽天]
  • ベック, A. T.・ラッシュ, A. J.・ショウ, B. F.・エメリィ, G. (2007). 『うつ病の認知療法』(坂野雄二, 監訳; 新版). 岩崎学術出版社.(原著出版 1979) [Amazon|楽天]

※本記事は上記文献をもとに、公認心理師・だびでが執筆時点(2026年10月)の情報で構成しています。

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