布団に入ると、昼間の失敗が何度も再生される。「なんであんな言い方をしたんだろう」「あの人はどう思っただろう」。答えが出ないとわかっていても、頭が同じところを回り続ける。
これは、反すう(反芻思考・ぐるぐる思考)と呼ばれる思考のパターンです。ゲームでたとえるなら、歩いても同じ場所へ戻ってしまう迷いの森。何も解決していないのに、体力とMPだけが削られていきます。
大事なのは、これが意志の弱さでも、性格の欠陥でもないことです。反すうには、困難へ対処しようとする中で習慣として強化される側面があります。この記事では、その仕組みと、ループに気づいて方向を変える方法を解説します。
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いま、ぐるぐる思考の最中なら
- 「反すう中」と名前をつける——内容を解決する前に、いまの状態へ気づく
- 「なぜ?」を「次に何をする?」へ変える——意味探しから、小さな一手へ向きを変える
- 30秒の行動に戻る——立つ、水を飲む、目に入る物を5つ探す
この記事でわかること
- 反すう(ぐるぐる思考)とは何か。心配・悩むこととの違い
- なぜ、答えが出ないとわかっていてもループが止まらないのか
- 「役に立つ考え込み」と「抜け出せない反すう」を分ける4つの軸
- 反すうとうつ・不安・回避のつながり
- 今日から試せる、ループから抜け出す6つの攻略ステップ
注意: この記事は公認心理師の立場から情報提供を目的として書いています。診断・治療の断言はできません。気になる症状がある場合は、必ず専門家にご相談ください。
反すう(ぐるぐる思考)とは?
反すうとは、頭の中で同じことを何度も考え続け、気持ちが動転した状態から抜け出せなくなることです。
「反すう」はもともと、牛が一度飲み込んだ草を口に戻して噛み直す行動を指す言葉です。心理学では、一度起きた出来事を何度も口に戻して噛み直すように考え続けることを、この言葉で表します。
文献によって「反芻」「反すう」「反芻思考」「考え込み」などと表記されますが、この記事では読みやすさを優先して「反すう」で統一します。
こんな体験に心当たりはないでしょうか。
- 一つの問題を何回も繰り返し思い悩んだ結果、結局なにも結論が出なかった
- 「なぜ自分は憂うつなんだろう」と深く考え込むことから抜け出せない
- 自分の失敗や過ちを、何度も思い出してしまう
- 一つの嫌な思い出が、別の嫌な思い出を呼び起こしてくる
- 常に自分を評価・批判し、期待に応えられなかったことばかり気にしている
- 「なぜ自分ばかりこうなるんだろう」と考えることが多い
これらは、反すうとして現れることのある例です。ただし、嫌な出来事を一度思い出したり、時間を決めて問題を整理したりすることまで、すべて反すうになるわけではありません。同じ問いが繰り返され、つらさが増え、具体的な行動や結論につながりにくいかが見分ける目安です。
反すうは「異常」ではありません
まず、いちばん大事な前提から。
反すうは、困難に直面したときの一般的で正常な反応です。
問題が起きたら、その問題について考えることで解決しようとしたり、意味を理解しようとしたりするのは、人間としてごく当然のことです。むしろ、じっくり考える力は人類の科学的・技術的な進歩を支えてきたものでもあります。
ただし、その思考があまりにも長く続き、どんな解決にも到達しないように思われるとき——そのとき、考えることは役に立たなくなります。この記事で扱うのは、その状態のほうです。
反すう・心配・悩むことの違い
似た言葉との違いを整理しておきましょう。
| 向いている方向 | 中心にある問い | |
|---|---|---|
| 反すう | 過去・自分自身 | 「なぜ、ああなってしまったのか」 |
| 心配(worry) | 未来・脅威 | 「これから、悪いことが起きたらどうしよう」 |
| 悩む・熟考 | 現在の問題 | 「どうすれば解決できるか」 |
反すうは過去や自分、心配は未来の脅威に向きやすいという傾向があります。ただし違いは時間の向きだけではなく、内容や目的も人によってさまざまです。一方で、どちらにも「否定的な内容を反復し、切り替えにくい」という共通点があるため、研究では「反復的なネガティブ思考(RNT)」という共通プロセスとして扱う枠組みがあります(Ehring & Watkins, 2008)。
そしてもう一つ重要なのが、反すうは診断名ではないということ。うつ病や不安症そのものではなく、気分の落ち込みや不安を長引かせることのある思考のプロセス(=クセ、習慣)として位置づけられます。
なぜ、答えが出ないとわかっているのに止まらないのか
「意味がないってわかってるのに、やめられない」。これが反すうの一番やっかいなところです。理由は2つあります。
理由①:反すうは「学習された習慣」だから
RFCBTでは、反すうを経験の中で学習され、繰り返すほど自動化しやすい習慣として捉えます。生まれつきの性格だけで決まるわけではなく、ストレス、気分、環境、これまでに役立った対処法などが重なって習慣化することがあります。
一例として、非常に批判的で怒りっぽい親のもとで育った子どもを想像してみてください。「今、親は怒っているだろうか」「どうすれば怒らせずに済むだろうか」と先回りして考え続けることは、その子にとって罰や批判を避けるための切実で合理的な戦略だったかもしれません。
問題は、その戦略が過剰に学習され、他の場面にまで適用されるようになったときです。もう危険な相手がいない環境でも、あらゆる行動を過度に分析し続けてしまう。序盤のダンジョンを生き延びるために必死で覚えた「先読みスキル」が、レベルが上がっても自動発動し続けている——そんな状態です。かつては命綱だったスキルが、いまは足を止める原因になっている。
裏を返せば、学習によって強まった習慣は、繰り返しの練習によってより役に立つ反応へ少しずつ置き換えられる可能性があります。ここが希望の持てるポイントです。
理由②:反すうには「役割(機能)」があるから
行動が続く背景には、短期的に不安を和らげる、決断を先送りできるなど、その人なりの役割が隠れていることがあります。反すうも例外ではありません。認知行動療法では、これを反すうの機能と呼びます。
以下は、反すうが果たしている役割のチェックリストです。ぐるぐる考えているとき、自分にどれが当てはまりそうか、眺めてみてください。
ぐるぐると考え込む(反すうする)ことで……
(梅垣・中川, 2025 より)
- 失敗や間違いを防ぐ
- 問題や悩みごとに向き合い、理解する
- 問題に対処したり、物事をうまくやりくりしたりする
- 自分自身を奮起させ、やる気やモチベーションを高める
- 行動を起こす前に頭の中でいろいろ試して、最善の方法を探す
- 現実世界で行動するより、安全な頭の中で行動する
- 行動を先延ばしにできる
- 自分自身に対して厳しく批判的でいられる
- 相手の考えを読み取り、トラブルを避ける
- 失敗や恥をかく事態を避ける
- 大切なことを台無しにしてしまわないようにする
この中には、問題を理解しようとする役割だけでなく、「行動しなくて済む」「不確実な結果に直面せずに済む」という役割も含まれています。頭の中で考えているあいだは、現実世界でリスクを取らずに済むからです。
つまり反すうは、短期的には「戦闘を回避するスキル」として働くことがあります。頭の中でシミュレーションを回している限り、負けたり、恥をかいたりする場面には直面しません。安全な村の中で装備を眺め続けているようなものです。一時的に安心できるため、習慣が強まりやすくなります。
けれど、現実から新しい情報が入らないままでは、問題を確かめたり解決したりする機会も増えません。短期的には守ってくれるのに、長期的にはストーリーを進めにくくする。これが、反すうを手放しにくい理由の一つです。
きっかけと結果を分解する(ABCの視点)
ループを止めるには、まずループの入口を知る必要があります。認知行動療法では、次の3つに分けて整理します。
| A:先行事象(きっかけ) | B:反すう | C:結果 |
|---|---|---|
| 状況・環境 危険サイン(身体感覚・イメージ) | ぐるぐる考え込む | 気分の悪化 活力の低下 行動しないまま時間が過ぎる |
危険サインの例
- ひとりぼっちで座っているようなイメージが浮かぶ
- 胸が締めつけられるような感覚
- お腹がざわざわするような感覚
- 特定の時間帯(帰りの電車、寝る前、日曜の夕方)
反すうが始まる直前を振り返ると、人によってはこうした危険サインが見つかります。入口に早めに気づけると、別の行動を選ぶ余地が生まれます。
「役に立つ考え込み」と「抜け出せない反すう」の違い
ここがこの記事の山場です。
大事なのは、考えること自体が悪いわけではないということ。問題は「何を考えるか」ではなく、「どう考えるか」にあります。同じ出来事について考えていても、抜け出せる考え方と、抜け出せなくなる考え方があるのです。
車のエンジンがかからないとき、あなたは何を考えるか
わかりやすい例を挙げます。朝、車のエンジンがかかりません。このとき、2つの問いを比べてみてください。
問いA:「なぜこの車のエンジンがかからないんだろう? どうやったら直せるだろう?」
この問いは、あなたの注意を「最近の車の様子」「試せる手段」に向けます。バッテリーかもしれない、寒さかもしれない、プラグかもしれない。そしてボンネットを開けてみようという行動につながります。
問いB:「なぜ私にこんなことが起こるんだろう?」
この問いは、あなたの注意を自分自身と、出来事の意味に向けます。なんて不便なんだ、なぜ自分ばかり、これは自分のせいなのか——。そして、今日起きた別の悪いことや、過去の失敗まで芋づる式に呼び出してきます。
どちらも「なぜ」で始まる問いですが、行き先はまったく違います。
そしてもう一つ。思考と行動のバランスも決定的です。思考は、行動を導くものであるときに役に立ちます。行動すれば新しい情報が入り、それがまた次の思考の材料になる。この往復が回っているうちは、人は前に進みます。
しかし思考の量が行動をはるかに上回り、行動の代わりになってしまったとき、それは先延ばしや回避という結末になります。
4つの軸で見分ける:ACESの法則
反すうに焦点を当てた認知行動療法(RFCBT)では、役に立つ思考と役に立たない思考を、4つの軸で整理します。頭文字をとって ACESの法則 と呼びます。
| 抜け出せない反すうモード | 役に立つ思考モード(ACES) | |
|---|---|---|
| A | Passive(受身的) 「どうしようもない」と眺めている | Active(能動的) 自分にできる一手を探している |
| C | Abstract(抽象的) 「私はダメな人間だ」 | Concrete(具体的) 「今日の会議で、資料の3ページ目を説明できなかった」 |
| E | Evaluative(評価的) 「これはどういう意味なのか」と査定する | Experiential(体験的) その場の感覚・見え方・聞こえ方に触れている |
| S | Global(全体的・広範) 「いつも」「みんな」「人生ずっと」 | Specific(場面限定的) 「昨日の、あの場面で」 |
ぼんやりした黒いシルエットの猫と、目の色まで見える一匹の子猫。同じ「猫」でも、解像度がまったく違います。反すうは前者の世界で起こります。解像度を上げると、ループは回りにくくなります。
Why を How に置き換える
実践として試しやすいのが、次の言い換えです。
| ループを回す問い(Why) | 前に進む問い(How / What) |
|---|---|
| なぜ私はいつもこうなんだろう | 次に同じ場面が来たら、最初の一言をどう変えられるだろう |
| なぜあの人はあんなことを言ったんだろう | 事実として、何がどの順番で起きただろう |
| なぜ自分はこんなに弱いんだろう | 昨日、少しでもマシだった時間帯はいつだろう。何が違った? |
| どうしてこうなってしまったんだろう | いま自分にできることを、3つだけ挙げるとしたら? |
「なぜ?」という問い自体が悪いわけではありません。原因を理解するために役立つ場面もあります。ただし、答えの出ない抽象的な問いがループしているときは、「何が起きた?」「次に何をする?」と具体的な事実・方法・手順に向かう問いへ変えると、問題解決につながりやすくなることがあります(Watkins & Moulds, 2005)。
反すうとうつ・不安・回避のつながり
反すうはうつを長引かせる要因の一つ
反すうが注目されるのは、それがうつ状態と強く結びついているからです。
研究では、反すうの多さは、うつ・不安の症状や回復のしにくさと関連することが繰り返し報告されています。ただし、反すうだけでうつ病になるわけではありません。心身の状態や生活環境など複数の要因が関わる中で、気分の落ち込みを持続させる可能性のある要因の一つと考えるのが適切です。
反すうそのものを標的にしたRFCBTも研究されています。残遺症状のあるうつ病患者42人を対象にした初期のランダム化比較試験では、通常治療にRFCBTを加えた群で症状や寛解率の改善がみられ、その変化は反すうの減少によって媒介されていました。ただし、この研究には注意を同程度に受ける対照群がなく、試験規模も小さいという限界があります(Watkins et al., 2011)。
2024年の系統的レビューでは、対象となった12研究のうち10研究で抑うつ症状の改善が報告されましたが、標準CBTやマインドフルネスなどの積極的対照と比べて明確に優れているとは示されていません。RFCBTは有望な選択肢の一つですが、誰にでも同じ効果を保証する方法ではないと捉えてください(Li & Tang, 2024)。
うつ病そのものについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
👉 【公認心理師が解説】うつ病とは?”ただの落ち込み”との違いと回復への攻略ルート
👉 【公認心理師が解説】不安症とは?パニック症・社交不安症・広場恐怖症まで
「思考の癖(認知の歪み)」との違い
当ブログでは以前、思考の癖10パターンを紹介しました。白黒思考、べき思考、心のフィルターなどですね。
反すうとこれらは、レイヤーが違います。
- 思考の癖(認知の歪み)= 考えの「中身」のバグ(例:「全部自分のせいだ」という結論そのもの)
- 反すう = 考えの「進み方」のクセ(同じ道を何周もしてしまう歩き方)
地図の読み間違いが認知の歪み、その間違った地図を握りしめたまま同じ木の周りを回り続けるのが反すう、というイメージです。
セットで起きることも多く、歪んだ結論をぐるぐる回し続けると、ダメージは何倍にもなります。中身を扱うのが認知再構成法、処理の仕方を扱うのがこの記事の内容、と考えるとスッキリします。
反すう+回避=抜け出せないコンボ
うつ状態の持続を助長するもう一つの共通要素が 回避 です。そして反すうと回避は、非常に相性のよいコンビです。
回避には、たとえばこんな形があります。
- 先延ばし——物事を先送りし、決定を下さず、頭の中で何度も繰り返す
- 動揺するような出来事について、考えることを避けようとする
- 感情を抑え込む
- 新しい課題に取り組んだり、リスクを取ったりしない
- 人との交流を避け、閉じこもる
- 以前は楽しんでいた活動、得意だった活動をあきらめる
- 自己主張をせず、感情を表に出さない
- 何かを「する」よりも、何かについて「考える」ことを好む
- アルコールなどで感覚を麻痺させる
回避も、短期的な脅威に対しては非常に有効な戦略です。差し迫った危険から逃げるのは、最も賢明な行動でしょう。
問題は、長期的な問題に回避を使い続けたときです。回避は問題との接触を断つので、解決の機会そのものが失われます。さらに回避は他の場面にも広がっていく性質があり、悪いことを避けるつもりで活動範囲が縮み、結果として良いことも起きなくなっていきます。マップの行ける範囲が、じわじわ狭くなっていくイメージです。
「完璧にやれないならやらない」という思考が絡んでいる場合は、こちらも参考になります。
ループから抜け出す攻略ルート:6つのステップ
ここからはセルフケアとして試せる実践編です。反すうを「なくす」ことがゴールではありません。森に入らないようにするのではなく、「あ、いま同じ木の前にいるな」と早く気づいて、進む方向を変えられるようになることがゴールです。6つを一度にこなす必要はなく、取り組みやすいものを1つ選んでください。
ステップ1:まず記録して、パターンに気づく
習慣を変える第一歩は、その習慣を意識できるようになることです。逆に言えば、気づけていない習慣は変えられません。
1〜2週間、次の3点だけメモしてみてください。スマホのメモで十分です。
- いつ・どこで(例:日曜21時、風呂上がりのソファ)
- 直前に何があったか(例:来週の予定表を見た/胸がざわっとした)
- どのくらい続いて、どうやって終わったか(例:40分。子どもに呼ばれて終了)
数日分たまると、自分の反すうの発生条件が見えてきます。「疲れているとき」「ひとりのとき」「何もしていないとき」——人によって傾向はかなり違います。時間帯ごとの記録には、この無料ツールも使えます。
ステップ2:危険サインに名前をつける
記録から見つかった前ぶれに、自分だけの呼び名をつけます。「ざわざわ」「例のやつ」「ループ入りかけ」など、なんでも構いません。
名前がつくと、渦中にいるときに「あ、これ来た」と外側から気づきやすくなります。森の中を歩いている自分と、その様子を上から眺める自分との間に少し距離が生まれる。この一瞬のズレが、方向転換の余地になります。
ステップ3:Why を How に言い換える
ループに入っていることに気づいたら、頭の中の問いを書き換えます。
「なぜ私はいつもこうなんだろう」
→ 「次に同じ場面が来たら、どこを1つだけ変えられるだろう」
意味を問うループから、方法を問うモードへ移す。この言い換えが、思考を行動につながる方向へ戻すきっかけになります。
ステップ4:解像度を上げる(具体モードの練習)
抽象的な言葉が出てきたら、それを場面まで降ろします。
| ❌ 抽象・全体 | ⭕️ 具体・場面限定 |
|---|---|
| 私はコミュ障だ | 昨日の昼休み、Aさんに話しかけられて3秒黙ってしまった |
| 仕事が向いていない | 今週、金曜の報告書だけ手が止まった。他の日は進んだ |
| いつも失敗する | 先月のプレゼンは詰まった。先々月は最後まで話せた |
具体化すると、「例外」が見つかることがあります。「いつも」ではなかったと気づければ、ループの勢いを弱める手がかりになります。ぼんやりした森が、目印のある地形に変わるイメージです。うまくいった日と、うまくいかなかった日の違いを探すのも一つの方法です。
ステップ5:if-thenプランで先手を打つ
ループに入ってから対処するのは、実はかなり難しい。おすすめは、入る前に決めておくことです。
「もし〈危険サイン〉が来たら、そのときは〈行動〉をする」
- もし寝る前にぐるぐるが始まったら、そのときは起き上がって台所で水を1杯飲む
- もし日曜の夕方にざわざわしてきたら、そのときは10分だけ外を歩く
- もし通勤電車で反すうが始まったら、そのときは車内の広告を5つ声に出さずに読む
ポイントは、いつ・どこで・何をまで決めておくこと。「気をつける」ではなく、具体的な動作にしておくと実行しやすくなります。
ステップ6:「考える」を「する」に置き換える
最後は、回避を小さな接近行動に置き換えていく作業です。反すうが行動の代わりになっているときは、ごく小さな行動が注意を現実へ戻すきっかけになります。
- 没頭できる活動を用意する——反すうは、注意が自分の内側に向いているときに起こります。手や体を使う活動(料理、運動、楽器、掃除、散歩)は、注意を外側に引き戻します。うまい・下手ではなく、やっていること自体に焦点を合わせるのがコツです。
- 小さく始める——一度に全部やろうとせず、課題を対処可能なサイズに割ります。
- 頭の中だけで結論を出さず、確かめる——「たぶんこうなる」という予想が、確かめていないのに事実のように感じられることがあります。安全に試せる範囲で小さく行動し、結果を見にいく。足を一歩、実際に外へ踏み出すことが、森を抜けるルートの一つです。
考えを力ずくで消そうとすると、かえって意識が向き続けることがあります。うまく切り替わらない日があっても失敗ではありません。「気づけた」「30秒だけ別の行動を選べた」までをクリアとして数えてください。
具体的な進め方は、こちらの記事が役に立ちます。
👉 【公認心理師が解説】行動活性化とは?気分が落ち込んだときの「行動から攻略する」メソッド
👉 【公認心理師が解説】頭の中がごちゃごちゃで辛いあなたへ。「問題解決技法」7つのステップ
もっと深く攻略したい人へ:RFCBTの本
この記事で紹介した考え方は、RFCBT(反すう焦点化認知行動療法)という技法がベースになっています。反すうそのものを標的にし、「自分の反すうがどう作動しているか」を整理しながら、具体モード・没頭モード・コンパッションモードへの切り替えを練習します。
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自分の反すうパターンを整理し、エクササイズを通して切り替え方を練習したい人。
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だびでが選んだ理由この記事で扱った考え方を、読むだけで終わらせず、自分の場面に当てはめて練習できるからです。
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本を読んでも手応えが得られないとき、あるいは読む気力そのものが出ないときは、医療機関や相談機関に相談してください。ひとりで抜けなければならない森ではありません。
まとめ
- 反すうとは、同じことを繰り返し考え続け、気持ちが動転した状態から抜け出せなくなること。過去と自分に向かう、答えの出ないループです。
- 反すうは、困難に対処しようとする中で誰にでも起こりうる反応です。ただし長く続き、解決に至らないとき、役に立ちにくくなります。
- 止まりにくい背景には、習慣化と短期的な役割があります。 反すうが、不確実な結果や失敗に直面するのを避けるスキルとして働くこともあります。
- 役に立つ思考との違いは、内容ではなく進み方。能動的・具体的・体験的・場面限定的(ACES)に近づくほど、ループから抜けやすくなります。
- 反すうは、うつ・不安の症状や回復のしにくさと関連する要因の一つです。回避とセットになると、問題を確かめる機会が減ってしまいます。
- 習慣は、練習によって別の反応へ置き換えられる可能性があります。 気づく → 言い換える → 具体化する → 先手を打つ → 行動に戻す。この順に、できるところから練習しましょう。
森を抜けるコツは、速く歩くことではありません。一度立ち止まって、自分がどこにいるかを確かめることです。
こんなときは相談を
セルフケアには限界があります。次のような状態が続いているときは、早めに医療機関や相談窓口を利用してください。
- ぐるぐる思考で眠れない、食べられないなど、心身への影響が続いている
- 仕事や家事、学業に明らかな支障が出ている
- 気分の落ち込みや興味の低下が、2週間を目安にほぼ毎日続いている(2週間を待たず、悪化している段階で相談して構いません)
- 自分を責める考えが止まらず、消えてしまいたい気持ちがある
いま自分を傷つけるかもしれない、自分の安全を保てないと感じる場合は、セルフケアより安全の確保を優先してください。 日本にいる場合は119(救急)または110へ連絡する、救急外来へ行く、身近な人と一緒に安全な場所へ移動するなどの方法があります。電話・SNSの相談先は、厚生労働省の「まもろうよ こころ」から選べます。
反すうは、自分の中の声としてやってくるぶん、外から見えにくいものです。だからこそ、誰かに口に出して話すこと自体が、ループの外に出る一歩になります。
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参考文献
厚生労働省. (n.d.). まもろうよ こころ. https://www.mhlw.go.jp/mamorouyokokoro/ (2026年8月14日閲覧)
梅垣佑介・中川敦夫 (2025). 「反すう」に気づいてぐるぐる思考から抜け出そう!――認知行動療法に基づくセルフケアブック (大野裕, 監修). 岩崎学術出版社.
ワトキンス, E. R. (2023). うつ病の反すう焦点化認知行動療法 (大野裕, 監訳; 梅垣佑介・中川敦夫, 訳). 岩崎学術出版社. (原著出版 2016)
Ehring, T., & Watkins, E. R. (2008). Repetitive negative thinking as a transdiagnostic process. International Journal of Cognitive Therapy, 1(3), 192–205. https://doi.org/10.1521/ijct.2008.1.3.192
Li, Y., & Tang, C. (2024). A systematic review of the effects of rumination-focused cognitive behavioral therapy in reducing depressive symptoms. Frontiers in Psychology, 15, 1447207. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2024.1447207
Watkins, E. R., & Moulds, M. L. (2005). Distinct modes of ruminative self-focus: Impact of abstract versus concrete rumination on problem solving in depression. Emotion, 5(3), 319–328. https://doi.org/10.1037/1528-3542.5.3.319
Watkins, E. R., Mullan, E., Wingrove, J., Rimes, K., Steiner, H., Bathurst, N., Eastman, R., & Scott, J. (2011). Rumination-focused cognitive-behavioural therapy for residual depression: Phase II randomised controlled trial. The British Journal of Psychiatry, 199(4), 317–322. https://doi.org/10.1192/bjp.bp.110.090282
※本記事は上記文献をもとに、公認心理師・だびでが執筆時点(2026年8月)の情報で構成しています。
