こんにちは、公認心理師のだびでです。今回は、発達障害のひとつである「自閉スペクトラム症(ASD)」について、特徴や支援の方法をわかりやすくお伝えします。
このブログを通して、ASDへの理解が少しでも深まり、周囲にいる子どもたちやご自身の気づきに繋がればうれしいです。
自閉スペクトラム症とは
自閉スペクトラム症(ASD:Autism Spectrum Disorder)は、コミュニケーションや行動の面で特性が見られる発達障害のひとつです。
ASDのあらわれ方は人によって異なり、軽度から重度までグラデーションがあります。今回は、主に子どものASDに見られる特徴を中心に解説します。
ASDの診断基準(DSM-5より)
ASDは、正式な診断名であり、以下の2つの領域での特性が確認される必要があります。
A. 社会的コミュニケーションと対人関係の困難(すべてに当てはまる)
- 相手との気持ちのやりとりが難しい
- 非言語的なコミュニケーションが苦手(視線や表情など)
- 人間関係の築き方・維持・理解が難しい
B. 興味や行動の偏り(以下のうち少なくとも2つ)
- 同じ行動や言葉を繰り返す
- 決まったやり方へのこだわり
- 非常に狭く強い興味をもつ
- 感覚への敏感さ・鈍感さ
ASDの子どもによく見られる4つの特徴
今回はASDの子どもによくみられる4つの特徴について説明していきます。
人との関わりが難しい
ASDの子どもは、どうやって関わればいいのかがわかにくいことがあります。
- ごっこ遊びに興味を示さない、一人遊びを好む
- 目を合わせるのが苦手
- ケガをした友達にどう声をかけていいかわからない
- 冗談や皮肉をそのまま受け取ってしまう
集団生活に馴染みにくく、幼稚園や学校で戸惑うこともあります。
言葉やコミュニケーションの使い方が独特
ASDの子どもは、言葉の成長がゆっくりだったり、少し変わった使い方をすることがあります。
- 言葉をオウム返しする(反響言語)
- 自分を「あなた」や「○○ちゃん」と呼ぶ(代名詞の逆転)
- 一方的に話すして会話のやりとりが苦手
- 比喩や冗談が通じにくい
- 指さしやジェスチャー(手振り・表情)で意思疎通が苦手
言葉をたくさん知っていても、それをうまく対人関係に活かすのが難しいことがあります。
こだわりが強く、同じことを繰り返す
ASDの子どもは、その子なりのこだわりがあったり、1つのことにすごく熱中する特徴が見られます。
- いつも同じ道を通らないと不安になる
- 家具の配置が変わるとパニックになる
- 手をひらひらさせる、ジャンプを繰り返す
- 特定のもの(ひも、ゴミ箱、数字など)に強い関心を示す
一見すると不思議に見える行動も、その子にとって意味があり、安心感を得るための行動であることも多いです。
感覚の敏感さ・鈍感さ
ASDの子どもは大きい音、高い音などが苦手と特徴もよく見られます。
- 大きな音や触られることに過敏
- 痛みに気づきにくい、暑さ寒さの感覚が鈍い
- 偏食が強い
まわりの子どもが気にならない刺激に強く反応したり、逆に無反応であったりすることがあります。
ASDの子どもへの支援
ASDの子どもたちは、さまざまな理由から生きづらさを感じやすいです。しかし、その子にあった支援をすれば生きづらさを減らしながら過ごしていくことができます。
療育(りょういく)
ASDの子どもへの支援として、療育が効果的です。療育は児童発達支援センターや放課後デイサービスで行われることが多いです。たとえば、「ソーシャルスキルトレーニング(SST)」は、人とのやりとりや感情表現を遊びの中で楽しく学ぶものです。
また、ASDの子どもには「TEACCH(ティーチ)」という支援法が効果的です。
TEACCHとは、一人ひとりの特性に合わせて「構造化された環境」を用いて理解を助ける支援法です。予定を見える化したり、活動の手順を明確にすることで安心感をもたらし、日常生活をスムーズにします。また、療育は専門施設だけで行うわけではなく、子どもが過ごすあらゆる場所で療育的なかかわりが大切です。家庭や幼稚園、学校での「環境調整」も大切です。予定やルールを見える形にしたり、静かな場所を作ることで、過ごしやすさがぐっと変わります。
薬物療法
ASDそのものを治す薬はありませんが、眠れない、不安が強いなどの困りごとには、お薬によるサポートも選択肢のひとつです。
幼稚園生など幼い時期はあまりお薬によって支援することは少ないですが、小学生になってからはお薬で支援する場合もあります。
「ASDかも」と思ったら
このブログを読んで「うちの子が当てはまる気がする」「私はASDなのかもしれない」と感じた方もいるかもしれません。でも、診断は必ず専門の機関で受けることが大切です。
誰にでも発達障害の“特性”は少しずつあります。 困りごとがあったとしても、それがASDによるものとは限りません。うつ病や不安症、愛着の問題など、似たような状態を生む別の原因もあります。
一人で抱え込まず、ぜひ精神科や地域の相談機関にご相談ください。
最後に
ASDは親の育て方でも、本人のせいでもありません。
そして、ASDの子どもたちは「ちがい」があるだけで、「間違い」ではありません。
発達“障害”と呼ばれるのは、社会の枠組みに合わなかっただけ。もしその枠が広がれば、それは障害ではなくなるかもしれません。適切な支援と理解のある環境があれば、ASDの子どもたちはその強みを活かしてのびのびと生きていけます。それけではなく、イチローや米津玄師、スティーブ・ジョブズのように強みを活かして社会に大きく貢献する人も現れると心理師として、支援者として、私はそう信じています。
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