【公認心理師がいか頭の中がごちゃごちゃで辛いあなたへ。公認心理師が教える「問題解決療法」7つのステップ

認知行動療法

こんにちは、公認心理師のだびでです。

日々の生活の中で、「やらなければいけないことがあるのに、手がつけられない」「悩み事が頭から離れず、どう動いていいかわからない」と立ち止まってしまうことはありませんか?

私たちは、仕事、家庭、人間関係、あるいは自分自身の健康など、常に大小さまざまな問題に直面して生きています。それらに圧倒され、出口が見えないように感じることもあるでしょう。

今日は、そんな時に役立つ「問題解決技法」についてご紹介します。これは認知行動療法(CBT)と呼ばれる心理療法の中核的技法の一つです。困りごとを整理し、具体的な解決策を見つけて実行するための、いわば「心の整理術」であり「行動のトレーニング」です。

専門的な知識がなくても、今日から少しずつ試せるこの技法について解説します。

困りごとが解決できない理由

まず最初にお伝えしたいのは、問題が解決できないのは、あなたの能力が低いからでも性格が弱いからでもないということです。多くの場合、それは「問題への向き合い方(構え)」「具体的なスキルの使い方」に理由があります。

そして、私たちが困難に直面して動けなくなってしまう背景には、主に3つの要因が絡み合っています。

1. 問題を「脅威」として捉えてしまう(否定的問題志向)

問題が起きた時、「これは自分にとって最悪なことだ」「自分には解決する力がない」とネガティブに捉えてしまうことがあります。

これを専門用語で**「否定的問題志向」**と呼びます。この思考に支配されると、問題そのものよりも、そこから生じる不安や抑うつといった感情に圧倒され、思考が止まってしまいます。

2. 感情の波に飲み込まれている

「つらくてどうしようもない」「焦ってばかりいる」といった感情の嵐の中にいると、私たちの脳がうまく機能しなくなります。その結果、問題を冷静に見ることができず、「もうどうしようもない」という無力感に襲われてしまいます。

3. 問題が大きすぎて「お化け」になっている

「将来が不安だ」「仕事がうまくいかない」といった悩みは、実態がぼんやりとしていて巨大です。これをそのまま扱おうとするのは、巨大な岩を素手で動かそうとするようなものです。具体的で小さく砕かれた形になっていないため、どこから手をつけていいかわからず、行動が止まってしまうのです。

つまり、解決できないのは**「方法を知らない」「問題が大きすぎる」**だけなのです。

問題解決技法とは:現実的な「攻略法」を学ぶ

問題解決技法とは、日常生活で起こる様々なストレッサーや困難に対し、効果的に対処するスキルを身につけるための認知行動療法の中核的技法の一つです。心理療法です。

この技法は、「解決の正解がない」あるいは「複雑な」状況において、感情的な反応だけでなく、論理に基づいて具体的な行動計画を立てるための枠組みを提供する点にあります。

イメージとしては、絡み合って解けなくなった糸を、一本一本丁寧にほぐしていく作業や、大きすぎて食べられないホールケーキを、ひと口サイズに切り分ける作業に似ています。

この技法に取り組むことで、以下のような効果が期待できます。

  • 圧倒されていた問題を、自分でコントロールできる感覚(自己効力感)を取り戻せる。
  • 漠然とした不安が減り、具体的な行動に移れるようになる。
  • 「失敗」を「学習の機会」として捉え直せるようになる。

では、実際にどのように進めていくのか、具体的な7つのステップを見ていきましょう。

問題解決技法の7つのステップ

問題解決技法は、構造化された手順に沿って進めることで効果を発揮します。紙とペンを用意して、書き出しながら進めることを強くお勧めします。頭の中で考えるだけでは、堂々巡りをしてしまうからです。

問題解決技法は、以下の7つのステップを順に進めていきます。

  1. 問題の特定と明確化
  2. 目標の設定
  3. 解決策の案出(ブレインストーミング)
  4. 解決策の検討(メリット・デメリットの評価)
  5. 解決策の決定
  6. 行動計画の立案と実行(アクションプラン)
  7. 解決策の評価

1つずつ解説していきます。

1.問題の特定と明確化

最初のステップは、漠然とした悩みを「具体的な課題」に変換することです。これが最も重要で、ここがうまくいけば半分は解決したようなものです。

具体的には、次の3つのポイントを意識してみてください。

① 事実と解釈を分ける

「上司が嫌なやつだ」というのは、私たちの「解釈」や「感情」です。一方で「毎朝の会議で上司が私の発言を遮る」というのが「事実(問題)」です。カメラで撮影できるような客観的な事実として記述することで、問題が明確になります。

② 5W1Hで分解する

「誰が、いつ、どこで、何を、なぜ、どのように」問題が起きているのかを書き出してみましょう。こうすることで、問題の輪郭がはっきりしてきます。

③ 問題を小さくする

「仕事がつらい」という大きな悩みではなく、「残業が多い」「特定の業務がわからない」「同僚に相談できない」など、要素を分解(チャンキング)してみましょう。小さくすればするほど、解決策が見えやすくなります。

2. 目標の設定

問題がはっきりしたら、次に「どうなりたいか」というゴールを決めます。ここで重要なのは、曖昧な目標ではなく、具体的で実現可能な目標を設定することです。

目標設定にはSMART GOALの設定が有効です。この法則に沿って目標を立てることで、達成に向けた道筋が明確になり、モチベーションも維持しやすくなります。

SMART GOALとは

SMAR GOALは認知行動療法における目標を設定するための重要な考え方です。

  • S (Specific – 具体的): 目標は明確で具体的にします。「頑張る」ではなく「毎日30分勉強する」のようにイメージできるようにします。
  • M (Measurable – 測定可能): 達成度を数値や基準で測れるようにします。「少し」ではなく「週3回」などにします。
  • A (Achievable – 達成可能): 今の自分の力や環境で無理なく実現できるような表現にします。高すぎる目標は挫折の原因になります。
  • R (Relevant – 関連性): 自分にとって本当に重要で、意味のある目標であることを確認します。
  • T (Time-bound – 期限): いつまでに達成するか、明確な期限を設けます。「いつか」ではなく「来週の金曜日まで」のように期限を設定します。

このSMARTの法則を意識することで、「なんとなく」ではなく、着実に前進できる目標が設定できます。

目標設定のコツ

また、目標設定では以下の2点も心に留めておきましょう。

  • ハードルを下げる: うつ状態や疲れがたまっている時は、完璧を目指さないことが重要です。「完全に解決する(100点)」ではなく、「今より少しマシになる(30点)」を目指しましょう。
  • 他人は変えられない: 目標は「自分が行動できること」にします。「あの人の性格を変える」は目標になりません。「あの人への対応を変える」を目標にするなど主語は「私」 にしましょう。

3. 解決策の案出(ブレインストーミング)

目標が決まったら、次はそれを達成するための手段をできるだけ多く出していきます。この段階では**「質より量」**を意識してください。

効果的にアイデアを出すために、以下の3つのルールを守りましょう。

批判厳禁(判断延期の法則)

「それは無理だ」「お金がかかる」といった評価は後回しにします。この段階では、どんなにバカげた案でも否定せずに書き出すことが大切です。

自由奔放

奇抜なアイデアも大歓迎です。「宇宙人に頼む」といった突拍子もない案でも構いません。思考の枠を外すことで、意外な解決策が見つかることもあります。

質より量(数の法則)

たくさんの案を出すほど、良い解決策が含まれる確率が上がります。10個以上を書く勢いて書き出してみましょう。解決策はさまざまな方法があります。「何もしない」「誰かに助けを求める」といった選択肢も、立派な解決策の一つです。すべての問題に積極的な行動が必要なわけではありません。

4. 解決策の検討(メリット・デメリットの評価)

出し尽くしたアイデアの中から、現実的なものを絞り込んでいきます。それぞれの解決策について、**「長所(メリット)」と「短所(デメリット)」**を書き出してみましょう。

評価する視点

解決策を評価する際は、以下の3つの視点から考えてみましょう。

  • 自分にとってのメリット/デメリット
  • 他者(家族や同僚)にとってのメリット/デメリット
  • 短期的/長期的な影響

例えば、「会社を辞める」という案には、「すぐにストレスから解放される(短期的メリット)」がありますが、「収入がなくなる(長期的デメリット)」もあります。このように書き出すことで、感情に流されず客観的に評価できるようになります。

この段階で大切なのは、完璧な解決策を探すことではなく、自分にとって最も実行しやすく、効果が期待できる案を見極めることです。

5.解決策の決定

評価に基づき、実行に移す解決策を一つ選びます。

解説策を選ぶときは以下の2つの点を意識します。

  • 実行可能性を重視する: 「効果は絶大だが実行が難しい案」よりも、「効果はそこそこだが、今日から確実にできる案」を選びましょう。小さな成功体験を積み重ねることが、自信と次のステップにつながります。
  • 複数の案を組み合わせる: 一つの案だけでなく、「上司に相談する(案A)」と「業務マニュアルを見直す(案B)」を組み合わせることで、成功率が高まることもあります。多角的なアプローチが効果的な場合も多いのです。

大切なのは、「完璧な解決策」を探すことではなく、「今の自分にできる、一歩前に進める選択」をすることです。

6.行動計画の立案と実行(アクションプラン)

「何をすべきか」が決まったら、それを「いつ、どこで、どのように」実行するか、具体的なスケジュールに落とし込みます。これをアクションプランと呼びます。

ここでの最大のポイントは、「うまくいかない場合(障害)を予測しておく」ことです。

障害の予測: 「やろうとした時に、何が邪魔になりそうか?」を考えます。

内的要因: 「面倒くさくなる」「不安になる」

外的要因: 「雨が降る」「相手が忙しい」

対処法の準備: 障害が起きた時の「プランB」を用意しておきます。

◦ 例:「やる気が出なかったら、とりあえず5分だけやってみる」

◦ 例:「相手が忙しそうなら、メールで要件だけ送る」

計画は、失敗しないようにスモールステップに分解してください。そして、失敗する理由を考えて事前に対策してください。

7.解決策の評価

実行した結果を振り返ります。

  • うまくいった場合: 自分を褒めてあげましょう。自己効力感が高まり、次への自信につながります。そして、次の問題の解決策を考えましょう。
  • うまくいかなかった場合: 自分を責める必要はありません。それは「失敗」ではなく、「この方法ではうまくいかないというデータが得られた」という成果です。また、違う方法を試してみます。

アクション・プランを成功しても失敗してもそれはあなたのQOLをあげる1つの資料になります。

まとめ

ここまで、問題解決技法の7つのステップをご紹介しました。

  1. 問題を具体的に定義する
  2. 現実的な目標を立てる(SMART)
  3. 解決策をたくさん出す(批判厳禁)
  4. メリット・デメリットを評価する
  5. 解決策を選ぶ
  6. 具体的な計画を立て、障害を予測する
  7. 実行して、結果を評価する

この技法は、一度やって終わりではありません。何度も繰り返すことで、脳の使い方が変わり、ストレスに対する「レジリエンス(回復力)」が高まっていきます。

最初は紙に書き出すのが面倒に感じるかもしれません。しかし、頭の中だけで悩んでいると、不安は雪だるま式に膨らんでしまいます。書き出して「外在化(自分の外に出す)」することで、あなたは問題と距離を取り、冷静な「問題解決者」になることができます。

認知行動療法では、治療者はガイド役に過ぎません。あなた自身の人生の専門家は、あなた自身です。この技法という道具を使って、まずは今日、小さな困りごとを一つ、実験するつもりで解決に向けて動いてみませんか?

その小さな一歩が、やがて大きな自信へとつながっていくはずです。

参考文献

  1. 伊藤絵美. (2022). 世界一隅々まで書いた認知行動療法・問題解決法の本 . 遠見書房.
  2. 「各精神障害に共通する認知行動療法のアセスメント、基盤スキル、多職種連携のマニュアル開発」研究班.(2023).『認知行動療法の共通基盤マニュアル』.
  3. ベック, J. S., 伊藤, 絵美 (翻訳), & 藤澤, 大介 (翻訳). (2023). 認知行動療法実践ガイド:基礎から応用まで 第3版. 星和書店.
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